戦闘開始
「死ねっこのサディストオ!!」
「やなこった!」
…ったく
たかが弁当のタコさんウインナーを取ったからって辞書を投げなくてもいいんじゃないかと思う
誰の弁当?チャイナのに決まってんだろィ
「逃げんなァ!せっかくのタコ様ウインナーをオォ!!」
「様って…まあ、うまかったぜィ!」
「死ねエェ!」
バタバタと廊下に出たり、教室内を走り回るのはいつものことでクラスの奴等は誰も気にしない
むしろそれが日常に化している今日この頃
それが良いのか悪いのか、この騒ぎによって何が発展するわけでもない
だからこそ我ながらやってることが「好きな子ほどいじめたい」という行為で俺は小学生かとツッコミたくなる
大方これで分かるだろうが俺はこの大食いチャイナ娘が好きなわけだ
廊下に出ても尚追いかけてくるチャイナ
それに追い付かれないよう、けれど見失われない程度の距離を保って走る
「待て!このッ…うわあっ!?」
「!…っと、危ねェ!」
間一髪、階段から足を滑らせて落ちてきたチャイナを受け止めた
チャイナはギュッと瞑っていた目を開いて俺を見た
あ、ヤバ…なんか近い
てか上目遣いは反則だろう
どくどくと心臓の音が頭にまで響いてくる
「あ、ありがとアル」
「…おう」
なんだろう
妙に照れくさくてチャイナの顔が見れねェ…
しばらくしてバランスを取り戻したチャイナが少し自分の腕の中から離れ出したその時、なんとも明るいが少しトーンを低くした声が聞こえた
「何してんの?神楽」
「に、兄ちゃんッ!なんでここに!?」
「神楽に会いたくて」
「…キモイアル兄ちゃん」
「冗談だよ」
そしてチャイナのいう兄ちゃんはニコッと爽やかな笑顔を向けて俺の方を見た
「君、なんで神楽と抱き合ってるの?」
「「!」」
その言葉を言われた瞬時にバッと離れた
いや、離れたのはチャイナのみ
俺はただ呆然と立っていた
なんだ、助けてやったのにこの仕打ちは
つーか少しくらい俺の気持ちに気づいてくれたって良いんじゃねーか?
軽く喧嘩紛いなことをしてても助けるとか、普通ありえないんだけど
つか、気づかなくてもこう…ときめいたりしないのか?
いや、ときめけよ!
顔に出ていたのかチャイナ兄は少し黒い笑みをしてチャイナを俺から遠ざけて自分に引き寄せていた
「怖いなあ、その顔。神楽、こいつには近づいちゃダメだよ」
カチンッ
「失礼でさァね、へらへら笑いやがって」
「口も悪いんだね。神楽の友達なの?」
「敵アルよ。…って、兄ちゃんには関係ないアル!」
「…おいチャイナ、5限始まりまさァ。行きやしょう」
チャイナ兄からチャイナを取り上げようとチャイナの腕を掴む
「神楽に触んないでくんない?神楽、お前に用があったのは本当。だからこっち来て」
チャイナ兄は俺が掴んでるチャイナの反対側の腕を掴んで離さない
お互いに互角の力で引っ張り合いチャイナは「痛い!!」と叫んでいた
「神楽が痛がってるんだから離しなよ」
「それは此方の台詞でさァお兄さん」
「君にお兄さんなんて言われたくないなァ」
バチバチと火花が散る
こいつ…気に食わねェ、ときっとお互いが思ったことだろう
睨みあったまま数分たつとキーンコーンカーンコーンとお決まりのチャイムが通りすぎてった
「授業始まってしまうアル!兄ちゃん離して!お前もだバカサド!」
チャイナはそう言ってブンッと腕を動かして俺とチャイナ兄から離れた
「じゃあなバカ共ッ!」
呆気にとられていたが、すぐに状況を把握して「ふざけんな」と言いながらチャイナの後ろを走った
少ししてからチラリと後ろを向くとチャイナ兄がにこやかな笑顔で手を振っていた
いや、にこやかなんだけどどす黒い笑顔だった
あの顔からしておそらく「妹に手ェ出してんじゃねーよ」と言うことなんだろう
くそ、なんで好きな奴にバレる前にその兄にバレちまうんだ
その鋭さを妹に分けてやってくれ、と思う今日この頃だった
戦闘開始
そして次の日
「はい、今日からこのクラスの仲間な」
「神威です。よろしく」
チャイナ兄…もとい神威は不敵な笑みを俺に交わしていた
チャイナも俺も口を開けてただ呆然とその光景を見ていた
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