オレンジ色の教室
ポカポカの日差しがモロに当たる窓側の席
お弁当を食べ終わってからの午後の授業は正直眠いと思う
思うってか眠いよ、特に社会科なんて…
うつらうつらと閉じかけている眼で黒板を見つめる
バシィッ!!
「イタアアァ!?何するアルかアアァ!?」
「俺の授業で寝るなんざやるじゃねーかィ」
いつの間にか意識を放棄していたようだ
授業は進んでいて黒板に書かれていた文字もすっかり変わっている
「ッ仕方ないアルよ!!眠いし、社会科なんて頭使わないし当てられないし!」
ただでさえ眠いのにその上何もせずノートに板書するだけなら誰だって寝るわアァ!!
「教師にそこまで言う奴ァ初めてでさぁ…つーか逆ギレ…ま、いいや。お前居残りな」
社会科教師である沖田総悟はそれだけ言って授業を再開した
…って
「居残りだとオォ!?ふざけんなアァ!!」
そんな叫びは空気に消えた
「お、サボらず残ってんじゃねーか」
赤い夕日が差し込んできた中、ただ一人―私のみが机に座っていたのを確認する先生
「私、真面目な生徒なんで」
「真面目な生徒は居残りなんてさせられるのかィ?」
「…さっさと用件を言うヨロシ。帰りたいアル」
教室で10分も待たされたのだから、と言うとククッと笑われ、「わかった」と返された
「ま、補習なんてもんはねェし…」
「?なら居残りなんてしなくても」
「あんなん口実でさァ」
「ハァ!?」
何を言い出すんだこの教師は
先生は私の前の席の子の椅子に座り、私と目線を合わせる
…近い
そういえば『沖田先生ファンクラブ』なんてあったっけ
興味はなかったが、こうして見ると確かに顔は整っているしそこらの男とは格違いだ
「見とれてる」
「バッ違っ…そんなんじゃないアル!」
図星なだけに少し焦って不自然な態度をとってしまった
「ッで!?用件は!?」
「ん、いや…真面目な話なんだけど」
「だから何アルか?」
じっと目を合わされ、少し視線をずらした
でないと心臓が壊れてしまうと思ったから
「…好きなんだけど」
は?今なんと?
頭がフリーズしてしまった
ペチペチと頬を叩かれハッとして少し身を引いた
「な、ななななッ何を言い出すアルか?流石に冗談にしか聞こえないアル」
「冗談じゃねーから。言ったろ?真面目な話って」
「そ、そりゃ言ったけど…でも…いきなり…」
「大分前から好きだった。今日がチャンスだと思ったんだよ」
「でもッ…」
私たち教師と生徒だよ?
ぐるぐると混乱している頭で何を言えば良いのか考える
「ッ不純ヨ…こんなの」
多分今の私は酷いことを言ってる
そんなの分かってる
おそるおそる視線を先生に戻すとバチリと目が合った
先生は暫く考えてからニッと笑いだした
「!?」
「悪ィが俺ァ諦めるなんて文字知らねェから」
ガタンと椅子から立ち上がる先生を眼で追いやる
「ぜってー惚れさせる」
もう不純だの教師と生徒だの、そんな言い訳させねェから
先生はそれだけ残して教室を出ていった
「…バカアル。不純、不潔!インモラル!!」
私は一人の教室で先生に対しての愚痴を喚き散らした
そして鞄に用具を詰め込み、さっさと帰ろうと席を立った
オレンジ色の教室
夕日があるうちに帰らなきゃ
この赤い顔をごまかせない
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