仲直りはタイミング
「お前ら、どうして喧嘩したんだ?」
半分テロに侵されたような教室の中で銀八が現行犯の2人に問う。
その現行犯、ドS王子の沖田総悟とグルグル眼鏡をかけたチャイナ娘の神楽はムスッとして銀八の前で正座している。
先に声を発したのは沖田だった。
「チャイナが先に机を投げてきたんでィ」
すると、すかさず神楽も銀八に言う。
「はぁ!?お前が先に椅子を投げてくるからアル!!」
「その前にお前が教科書を投げっからだろィ!!」
「更にその前にお前が紙くずを投げるからアル!!」
「その更にその前にお前がペンを投げっからだろぃ!!」
2人のやりとりにため息をつく銀八。
「まあ、落ち着け。ってかお前ら長々と何やってんだよ」
「「だってこいつが!!」」
「「…」」
「「真似すんな!!」」
2人共 にらみ合い、今にもテロ再発しそうな雰囲気がかもし出されている。
「仲のよろしいことで。お前ら罰として放課後、校庭の掃除しろ〜」
「「はあ!?」」
2人共反対をしたが、うまく丸め込まれ結局、掃除をすることになってしまったのだった。
下校時刻…。みんなが帰っていく中、沖田と神楽はお互い目を合わせずに、ほうきでザッザッと葉っぱやらゴミをはらう。
お互い仲直りをしたいと思っている訳だが、タイミングが掴めない。
((はあ…サドの奴まだ怒ってンのカ?どうしたらいいネ))
((チャイナめ…まだ怒ってんのか?どうすりゃいいんでィ…))
そんなことを考えつつも、ラストの水をまいて掃除は終わろうとしていた。
「…水、かけるぜィ」
「…おうヨ」
会話はするが、それでも目線は合わせない。
沖田はホースを蛇口に繋ぎ蛇口をまわし、神楽はホースの先端を持つ。
「?おいサド。水が出ないアルよ?」
神楽はホースの中を覗くが、水が出る気配は全くない。
「おかしーな…」
蛇口を捻れるところまで捻る沖田。
「まだ出な…っうおっうっぷっ…」
「!?」
神楽を見れば、ずっとホースの中を覗いてたのか、どうやら神楽の顔面に大量の水がかかったようだ。
「おいおい…」
そう言いながら水道から離れ、神楽に近づく。
すると、水道からバシャアァという音が流れる。
どうやらホースがちゃんと繋がってなかったようで、外れてしまったのだ。
「うわ!止めねーと!!」
急いで水道に近づき、蛇口を手でおさえる沖田。
「バカサド!!手でおさえてどうするアルか!!」
顔の水を拭い、沖田に近づく。
「うわっ冷てぇ」
「だから!!手をどけるアル!!」
「あれ!?これってどっちに回すんだ!?」
「知るかぁ!えっと!?」
「ってお前も手でおさえてんじゃねーか!!」
「あーもう…ビショビショアルよ」
「俺もでィ」
ようやく水を止めることができ、くたくたになって座りこんでいる2人。
「あー…悪かった」
「あ…私こそゴメンアル」
やっと喧嘩の仲直りもでき、内心ホッとする2人。
「一応、水まいたし…帰るか…」
「そうアルな!帰るアル!!」
スッと立ち上がる2人。
すると沖田が学ランを脱いだ。
神楽が?を頭で浮かべていると、学ランを渡される。
「?」
「着とけ。水で濡れてるけど…。」
「は?なんでヨ」
「自分の格好見ろィ」
「え?」
よく見れば、水浸しになったせいか制服の下が透けていた。
「あ…でもキャミソール着てるから大丈夫ネ」
「アホか。無自覚も大概にしとけ」
「…」
「…ッ帰るぞ!!」
「うっ、うん」
柄にもなく優しかった沖田に少し顔を赤くさせつつ2人で歩く帰り道は
少しお互いの距離が縮まった──…
仲直りはタイミング
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