加速する鼓動
※学パロチャラ男銀と優等生妙
「ちょっと銀時君」
教室の窓側、最後列の席はいつだってそこに座る彼を取り囲んでがやがやと楽しく騒いでいる
しかし、またいつものように彼女のその一言で彼──銀時とその周りを囲んでいた友人達は静まり返る
「…何スか、委員長」
腕を組み、仁王立ちして自分を見下ろすクラスの優等生委員長──志村妙に渋々と、しかし少し楽しげに対応をする銀時
それによりようやく妙はムスッとした口を開く
「もうすぐ授業が始まるんだから静かにして。後、その身だしなみも良くないわ」
「…はいはい。分かりました」
「ええー!?銀時君似合ってるのに!」「委員長に言われたからって変える必要なくね?」
銀時の友人達は皆、ぐちぐち言うも銀時はきちんと首までボタンを閉め、緩かったネクタイもきちんと締めだす
「これで、い?」
「…いつもそうしなさいよ」
妙はそう一言だけ残して自分の席、即ち銀時の右横の席に着く
そう、二人は隣の席同士なのだ
「ねえ、委員長って銀時のこと好きなんじゃねーの?」
たったこの小さな一言
この、銀時の友人のたった一言はたちまち銀時の友人達の話題に変わりだす
「あー、言えてる!!うちらには注意しないの?って感じだし!」「うるさいのは銀時君じゃないしねー!」「けどさー、だったら無謀だよね〜!」「委員長は俺らとタイプ違うもんな」「どっちかってーと地味」
彼の友人達はきゃははっと笑いだす
銀時はその話題には入らず無言で聞いていた
対する隣、妙は無視をしていた
微かに俯き気味で
「じゃさ、俺等が委員長を変えてやるよ」「それいいね!」
「!?ちょっ、何!?」
先程まで銀時を囲んでいたみんなは次は委員長の妙を囲みだす
妙は目を丸くしつつもすぐに睨み返す
「委員長、銀時君が好きなんでしょー?」
「あいつ好みにしてあげよっかー」
「!?…好きなんかじゃ…」
「いーからいーから。はい、リボン緩めてボタンも開けて〜」
「や、やめてよ!」
さすが女子達は行動が素早い
すぐさま身なりを崩そうと妙を掴む
もちろん彼女がすんなりと言うことを聞くわけは無いので手こずっているようだが
「ていうかいつもウザイんだって!」「そんなダサいカッコしてらんないし」「委員長もうちらとおんなじカッコしたらいいんじゃん」
日頃の恨みと言わんばかりの女子の行動は少しずつエスカレートし出し、彼女の腕や髪までもを掴みだす
その場はもはや虐めに似たような雰囲気になっていた
ガンッ!!
「あー、授業たりぃな…つか先生まだ来ねーな…委員長、呼びに行こーぜ」
どうせあの教師授業忘れてるだろーし、ほら、これで3回目だぜ
銀時はそう独り言を発しながら妙の手を引っ張り、輪の中から抜け出させる
「ちょ、ぎん──」
「お前ら、俺が蹴っちゃった机、直しといて。」
銀時の顔は笑顔をしているものの目だけは怒りを隠せていない
教室内は騒ぐことなくしんと静まり返っていた
銀時はその様子をしばらく眺め、妙と廊下に出て扉を締める直前に妙の周りを囲んでた女子たちに笑顔を向ける
「俺、別に今の委員長が好みだから」
その言葉の後にピシャリと閉められた扉の音だけが教室に響き渡った
「…銀時、君」
「何ですかー?」
「ありがとう…さっき、」
「委員長さぁ、すぐに嫌いだっていやあ良かったじゃん。何で言わなかったの?」
銀時は自分の後ろにいる妙の言葉を遮り、首をかしげて妙を見る
妙は少し固まっていたが苦笑いを溢す
「嫌いじゃ、無いから…かな」
小さな声でまるで独り言かのように呟く
銀時は目を丸くさせながら「え、」と声を出す
「…やっぱ今の無し!忘れて!!」
妙はそう言うと銀時を追い越し職員室を前にする
一方の銀時は「あー、」と声を漏らして少々俯き気味だ
妙はそれを見て「どうしたの」と銀時を見上げる
「っとな…俺がさっき教室で言ったのは本当だからな!」
銀時の顔は若干赤みを帯びていてそれを見た妙も伝染したかのように少し頬を赤らめ出し、お互いに無言になる
銀時はその空気に耐えられなくなり「俺、授業サボるわ!」の一言と共にシュバッと廊下を駆け出す
「…あ、ちょっ銀時く……ていうかサボるなッ!」
もうとっくに姿を消した彼にとりあえず小言を言う
妙は「もう…」と呆れながら職員室のドアを開けた
加速する鼓動
先生、授業忘れてますよ
あ、すまない!…志村くん
熱でもあるのかい?
は?
顔が赤いよ?
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