列車はいつの間にか進んでた
そんなことないだろう
「お前って志村のことになると反応するよな」
高杉に言われた台詞が脳を巡る
別に深い意味は無かったのかもしれない
気まぐれで、なんとなくなんてあいつの性格ならよくあることだ
「いってェ!?」
バシィ!!と頭を教師に教科書で叩かれ我に返る
教師は呆れ顔を向けてから授業に戻り、自分の後ろの席の高杉は「バカだな」と笑い、左横のズラは教師と同じ呆れ顔を自分に向けていた
多少の苛立ちと恥ずかしさを覚えながらも余計なことは考えず授業に集中することにした
「起立、礼」
委員長の号令がかかり、授業のキリがつく
次の科目は何だっけ
チラ、とズラの方を見る
どうやら移動教科のようだと確信して自分も持ち物を用意し、桂や高杉と行動を共にする
「おいズラ、何階の教室だっけ?」
「…銀時、ズラじゃない、桂だと何度言えば分かる。…3階だ。全く…そろそろ覚えたらどうだ」
「いやー、ズラがいるから覚える必要がねーんだよなァ」
「ククッ違いねェ」
「同意するな馬鹿者」
ケラケラ笑いながら一階から三階までの階段を上る
すると、「きゃ、」なんて声とバサバサと教科書が落ちる音が耳を掠めた
自分達の前方にいる女子の一人が教科書を落としてしまったようだ
とはいえ、別に拾ってやる義理もないし友人らしき人が隣にいるのだから…まあいいか、と事故完結をして俺達はその横を素通りする
もちろん、何事もないように会話しながら
三階の階段をようやく上りきる時、またもバサバサと教科書が落ちる音と「きゃ、」と言う声が次は後ろから
別に無視すれば良いってのに
俺は振り向いて教科書を落とし、声をあげた彼女──志村妙に駆け寄った
別に彼女の隣にも友人らしき人はいたし、拾ってやる義理もない
けれど体が勝手に動いていた
彼女の教科書を拾い上げ、「ほらよ」と渡してやる
「銀時、くん…」
「おい、銀時?」
「あー、今行く!」
彼女に名前を呼ばれるとは思わず暫し呆然としてしまったがズラの呼び掛けに我を取り戻す
急ぎ足でズラと高杉の方に駆け寄ると後ろから「銀時くんっ」と大きな声で呼ばれ、少々驚きながら振り向くと彼女、志村妙は柔らかい笑みを自分に向けていた
「ありがとう」
たった一言
彼女に言われた言葉に心臓が高鳴った
俺は彼女に背を向ける感じに前を向き直し、ひらりと手を振った
そのままズラと高杉の輪に入ると高杉もズラもニヤニヤと笑っていた
「…何だよ」
少し睨みながら声をかけると高杉が口を開く
「やっぱり志村のことになると反応するよな」
「!?」
「ていうか銀時…顔、赤いぞ?」
「〜〜!!うるせえ馬鹿野郎!!」
ズラにまで指摘をされ、ますます顔を赤くしてしまったのは言うまでもない
列車はいつの間にか進んでた
一体いつから彼女にだけ反応してたのか
・他の女の子も同じ状況なのに無意識にお妙さんにだけ優しくしたり、助けたり気にかけちゃう銀さん。他の女には全く無関心
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