スキの二文字
銀←妙
「落ち着きねーなァ…どうした?」
「!な、何でもっ!!」
「?」
まさか本当に二人きりになるとは…
いい機械ではあるのだが…どうしたものか
ここは万事屋
なぜ万事屋で二人きりになれたかって?
神楽ちゃんが気を利かせて定春くんと、その背中に新ちゃんを無理矢理のせて散歩に出掛けてくれたからよ
「にしても…何で新八まで連れてったんだ?…あ、分かった」
「!」
その一言に心臓がビクッと跳ねる
バ、バレたの?私の気持ち
…そう、察した通り私はこの金欠マダオ天パの駄目人間を好きなわけで
自分でも不思議なくらいだ
私の理想は玉の輿、又は某有名歌手の稲○さん
と高望みしてはいるがまさか全く逆のタイプを好きになるとは思わなくて
「お妙、お前さ」
「ッ…」
「何か話があるんだろ?何だ?」
「……そう来るのね」
「は?」
この男ッ…
そういえば女心には疎いものね
つまり、私から告えと
チャンスは確かに今だけど
心の準備っていうか…
ぐるぐる頭のなかで考えを回しているとパンッと目の前で銀さんの手拍子が鳴った
「大丈夫か?」
「大丈夫、です」
大丈夫なんかじゃないけどっ!
いつも座っていた銀さん指定の席に銀さんはいなくて、向かいのお客用のソファー…つまり私の前の席に座っていた
「落ち着け、ゆっくり言ってみろ」
「…」
「どうしたんだ?」
…言えっ
言うしかないんだから
そう、あくまで平静を保ったままで
「好きなんです」
「え」
「私、銀さんの事が好きなんです」
「…え、え?」
銀さんはぱちくりと瞬きをしながら私をまじまじと見ていた
「ね、熱でもあんのか?」
「至って真面目よ?銀さんの答えは?」
「え、俺、は…あー…みんなの銀さんだし…」
ズキリ、自分の何かがえぐられたかのように痛みが走る
つまり、フラれたってことね
「…分かりました、」
軋むソファーから腰を上げる
涙を見せる前にここからでなきゃ
「待てよお妙…お妙ッ!!」
いそいそと万事屋の玄関のドアを開けようとした手を掴まれ押し付けられた
「分かっちゃいねーよ、俺の気持ち」
ビクッと肩が上がる
いつもより低めの声が耳元で発せられ少し顔を赤面してしまう
私が銀さんに背を向けているから銀さんに今の顔を見られないのが唯一の救いだ
「…銀さんは…みんなの」
「違っ…咄嗟に焦って出ちまったんだよ…ごめん。けど俺が言いたいのはそれじゃなくて…」
「…銀さん…?っきゃあ!?」
まさか向きを反転させられ銀さんと向かい合わせにされるとは思わず、小さな悲鳴をあげてしまった
「お前と一緒の気持ちだから」
「え…」
「あー…ちゃんと言ってやっから…泣くなよ」
銀さんの骨張った男の人の指が頬に触れ、私の流してしまっていた涙を拭う
それから優しく抱き締められてまた耳元で囁かれた
紡ぐのはスキの二文字
その時、
驚きで一瞬涙が止まったが
再び涙が流れた
もちろん二回目は嬉しさで
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