ピンチの後にもピンチあり
「あ゛ー…怖かった…」
「…お疲れさまです」
「!?!?」
合コン後、船から無事に降りた俺たちはバラバラに帰っていた
だからまさかまだいるとは思わなかった
一本道を歩いていると後ろから声がして
振り向けばお妙がいた
「…新八は?」
「先に帰らせました。」
なんか刺々しいな…
けれどあからさまに怒っている様子ではない
「送るから」
そう言うとお妙は少し俺の隣に近づく
「…何でまだいたの?」
無言が辛くて声を出してみると、お妙はどうやら俺を待っていたようで
「?どうした…?」
「…銀さんは九ちゃんが好きだったの…?」
「は!?」
「別に、別れたいなら言ってくれればいいのよ。」
「!?いやいや、待て待て」
いきなりの別れ話を止める
「全ッ然意図が分からない!別れる!?何で!?」
ずっと俯いていたお妙は顔を上げて俺を睨む
あれ!?やっぱ怒ってる!?
何した俺エェ!?!?
「か、彼女に合コンのためにかわいい女の子を集めろって言うのは…百歩譲って良いとしても…でも」
怒っている顔はなんとなく涙を堪えている表情でもあった
「彼女ほったらかしにして他の女の子ばかり構うのって…おかしくないですか!?」
「あ…えと…でも、九兵衛に構ってただけだぜ?」
「九ちゃんは女の子よ!」
「あ、いやそうだけど」
「目の前で他の女の子と仲良くしてる彼氏を見て…傷つかない訳無いじゃない!!」
お妙はそこまで言うと黙って、またうつむいた
ヤバイ
ヤバイぞ
どうにかしないとマジで別れちまう…!?
「あ、あのだな…今日は深いわけがあって合コンを開いたんだよ」
「深い訳ってなんですか」
「…突貫工事?」
嘘つくのにももう少しましな嘘ついてください、とお妙は俺を目線から外した
「違うんだって。九兵衛を俺たちに惚れさせようと…」
「じゃあ九ちゃんを弄ぼうとしたってこと?…最悪だわ」
あああ!!
俺はどうやらフォローが下手らしいことが分かった
やべ、どうしよ…
「九兵衛に構ってたのは…バベルの塔の建設阻止のためにだな…」
「バベルの塔?」
九ちゃん、そんなものを建てるんですか?日本のどこに?そもそも合コンが関係あるの?
質問攻めをされて言葉を発せず黙る
バベルの塔がわかってねーよバカヤロー!!
あ、汚れたってつけりゃよかったかな…
うだうだと考えて黙り込んでいるうちにいつの間にか志村邸に着いてしまった
「…じゃ」
お妙は目を合わせないまま扉を押す
「ッ待て!!」
ふいにお妙を抱き寄せた
お妙は多少驚いていたが、「離して」と小さな声を出した
「放さねえ…」
少し力を入れるとお妙は黙った
「っこ、んな風にしたら許されるとでも思ってるの…?」
「違う。俺が好きなのはいつだってお前だけだよ」
泣き顔は見ていないが、おそらく泣いているのだろう
肩が震えているし声も…
「傷つけてごめん」
確かに自分のしたことを改めて考えると罪悪感が表れる
「九ちゃんが、好き…なの?」
「お前が好きだよ。…九兵衛のは…依頼があったんだよ」
嘘をついてはいない
自信を持って答えるとお妙は暫く躊躇った後に「分かりました」とのこと
「もう…合コンなんてこりごりだわ」
銀さん、モテるからと小さな声で言われたのを聞き逃さなかった
「ヤキモチか」
「!!違うっ!!」
照れているお妙をぎゅうっと抱き締めれば躊躇いながらもお妙は少し体を俺にもたれさせた
ピンチの後にもピンチあり
俺こそこりごりだ。
ま、ヤキモチ妬いてもらえたのは嬉しいけど
※合コン編で九兵衛にばかり構う銀さんを見て傷心のお妙さんと後でフォローに四苦八苦する銀さん
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