大きくて小さな世界
※捏造有り
ガタガタ…ドサッ
「…ったく…なんで俺まで…」
春うららかな休日に俺は志村邸でお妙と大掃除、的なことをしている
「大体フツーは正月前に大掃除だろ。遅くね?」
今押し入れを片してる俺の近くには誰もいない
つまり、独り言
うん、痛い目で見ないで
やめてそういうの
神楽は近所のガキ共と遊んでて、新八は…どこ行ったんだ?
ここ、アイツん家じゃん
ほったらかしにして遊びに行きやがったな!?
よし、3/4殺しに決定な
いや、さすがに可哀想かな
やっぱアレにしよう
アレ…
そう、アレだ。殴ろう
そうこうぶつくさ考えて押し入れから物を出していたのが悪かったのか
「うお!?」
あまりに重いものを持ってしまいガシャンッ!!とすごい音を出してぶちまけてしまった
「イテテ…ったくよー…ふざけんな……ん?」
爪先あたりに当たったものを蹴り飛ばすとアルバムらしいものが開かれていた
「こっ…これは!!」
お妙幼少期バージョン!!
マジか…一枚パクろ…貰おうかな…
アルバムに夢中になり、掃除を放棄する
どれもかわいいな、とか、髪短けーな、とか考えながらページを捲る
「…え?」
ワクワクしながら捲っていた手が止まる
なんで?
なんだこれ
「何やってんですか…ってアルバム!!!?」
写真パクろうとしてたんですか!?などと小言を言うお妙
当たってるけども
「それより、お前…これ…」
一枚の写真を指差すとお妙もそれを見る
そして「ああ」と頷く
「松陽さんじゃない」
「!!な、なんで!?」
しかもなんか親しげ!?
「なんでって…父上の古い友人ですけど…」
「なっ!?せ、先生と!?」
「先生!?
松陽さんとは…父上が生きてたときによく会ってましたよ」
新ちゃんの稽古をしてもらったこともあったかしらね、と思い出し笑いするお妙
「マジで!?松陽先生と面識あるんだ!?」
「ええ。…というか、さっきから疑問だったんですけど、銀さんも知ってたんですか?それ以前に先生って何?」
「松陽先生は俺の恩人だよ。…俺の過去、悲惨でさ…ひねくれてたのをまっすぐにしてくれた人」
「そう…。今もひねくれているけれど…そうなのね」
「…何が言いたいのお妙さん。…で、まあそんな仲なんだよ」
お妙はふーん、と言いながら押し入れを片す
すると何かを思い出したような顔をする
「昔ね、本当に私が小さい頃」
新ちゃんがまだ生まれてないくらい昔なんだけど、
とおぼろ気に口を動かすお妙
「『かわいい小鬼を拾ったんです。今はお妙ちゃんより年上の』」
それ、俺じゃね…?
「『いつか会って、仲良くしてあげてください』って言ってたのよね。私は楽しみにしてたんだけど…結局会えずじまいだったのよね…」
「…会えたよ」
「は?」
「いや、何でもねえ。…他には松陽先生は何て?」
お妙がせっせと片付けるのを見て、俺も手を動かす
「他に…あ、特徴!」
「特徴?」
「ええ…確か『意地っ張りなとこもあるけど不器用に優しくておどけてて、人一倍正義感が強い』って…………ん?」
お妙が急に俺を目にとらえてはなさなくなる
「…何」
「そういえば性格が似てるなぁって…外見も…」
「え゛!?」
「天然パーマで髪色はきれいな銀色、死んだ魚の目で、ふてぶてしい…だったような…」
「よく覚えてんな。…じゃあ俺なんじゃない?」
ていうか俺しかいねーよ、そんな奴
そういや一度だけ聞いたっけか
『おかっぱ頭で可愛らしくて正直な銀時より年下の女の子』
あれ、これお妙…!?
片付けを終え、居間にて向かい合ってお茶を飲む
「…私たち、もっと前にも会えていたのかもしれないですね」
「そうかな」
「そうよ。だから会えた」
お妙の言ってる意味は俺の脳ではさっぱりわからなかったが「そうか」と相槌を打つ
「そうなると世界は思った以上に狭いな」
「そうかしら」
「そうだよ。だから会えたんじゃねえ?」
お妙はくすりと笑って「そうですね」と言う
ふと机の上のお茶を手に取ると机に桜の花びらが乗っていた
大きくて小さい世界
じゃあ私たちには何らかの縁があるんじゃないかしら
小指に赤い糸ってか?
そのあとは
二人で赤面になって笑い合った
※銀さんとお妙さんが志村邸のお片付けをしてたらなんと若かりし頃の松陽先生とミニお妙さんの写真が…!!
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