呼吸をとめて
「お妙、アイス食う?」
「あら、気が利きますね。一口ください」
「うまいだろ?」
「そうね。…最近、ゴリラがまた煩いのよね」
「ふーん…絞めとけば?」
「簡単に言わないでくださいな」
「「…はい」」
志村邸で会話している二人の会話を遮って新八と神楽が手を挙げる
「「?」」
「あの…仲良すぎじゃありません?」
「ラブラブアル!!カップル通り越して夫婦アルよ!」
ぶっ、と銀時と妙は胃液を吐きそうになった
『ありえない』ではなく、『あたり』だったからなのだが
「こ、こんな奴好きじゃねーよ!そもそもコイツは対象外!女じゃねーよ」
銀時のマシンガントークが走る
妙の耳には他の言葉は聞こえなくて
ただ、『対象外』と『女じゃ無い』と言う言葉が頭を駆け巡った
妙がその場を立つと銀時トークはピタリと止んだ
「…そう、ですか」
妙から出たのはたったその一言
暴言と暴力を覚悟していた銀時は拍子抜けして妙を眺める
そして妙は玄関の方に速足で歩いた
「…おい!?」
遅れて後を追うと「…来ないでください」と言って妙は外を駆けていった
「ちょっ!?姉上が出てっちゃったじゃないですか!」
「銀ちゃんがあんなに姉御の悪口言うからアル!」
「…チッ」
後ろから覗いていた新八と神楽を置いて玄関から外に出た
もうどれだけ走ったのだろうか
妙は、はあはあ、と荒い息でふらふらと壁伝いに歩く
息が苦しくて辛くて涙が出た
「…おい」
肩を叩かれ、妙はピクッと反応した
少し上を見上げれば、いたのは黒い隊服を着た男
「土方、さん…」
「何してんだ?」
「…別に、何も」
泣き顔をさっと隠す
「…さしずめ万事屋に泣かされたんだろ」
「…貴方もストーカーでしたか?」
「お前が泣く時はそいつ絡み以外に考えられん」
話なら聞いてやる、と土方の優しい言葉が傷に優しく触れて、また泣きそうになりながら
事情を話した
「…分かってたんですけど…いざ言われれば泣けてきます」
対象外で女じゃ無い
好きな男に言われて悲しくならない女がいようか
少なくとも私は悲しくなる
妙は、また出そうになっている涙を堪えようと下唇を噛み締める
「…辛いか?」
言葉を出したら泣いてしまうから
妙はコクリと頷いた
すると土方に頭を撫でられる
「…だったら止めちまえよ」
「え?」
「あんな奴やめて俺と―…」
そこで土方の話は止まる
そして妙の腕が引っ張られて土方の頭を撫でていた手から離れた
「ふざけんな!こいつは俺んだ!!」
「!?ちょっ…銀さん!?」
銀時は土方の前で啖呵を切って妙を連れ去った
しばらく歩いた道端で妙が足を止める
「…いつから私は銀さんのになったの?」
あんなひどいことを言っておいて、と言う
それでもどこかで嬉しいと言う感情があって顔が緩みそうだ
銀時はしばらく黙ってからいきなり頭を下げた
「悪かった!酷いこと言って」
あまりにも素直な銀時に呆気をとられる妙
「嫌われたのは分かってる。フラれるのも承知の上で…言わせてほしい。」
「銀さ…」
「好きだ」
頭で理解するより先に体が動いた
妙は銀時の襟をつかんで引き寄せる
「勝手すぎます!!…私だって好きなのよ!」
そして噛みつくようにキスをした
呼吸をとめて
銀時はかたまったかと思えば
仕返しのように妙にキスをした
※両片想い銀妙で照れから妙に酷くしてしまい、それに傷ついた妙に接近する男性キャラに(土方or沖田)銀さんピンチ!
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