青春の一ページ
「おはよう銀時」
「おう、ズラ。毎度毎度はえーな」
「ズラじゃない桂だ。当たり前だ。俺はこのクラスの委員長だからな」
銀時が席に着けば席には桂に続いて坂本、遅れて高杉が集まる
「高杉、遅刻ギリギリとはけしからん!」
「うるせーよズラ」
「ズラじゃない!かつ―…」
「ズラ、おまん今日の現国の予習やった?」
「…ズラじゃな―…」
「どーせやってあんだろ?見せろよズラ」
「…どうしても俺の話を遮りたいわけだな…」
桂はわなわなと震える
「えぇい!そこに直れェェ!…あれ?無い!!」
刀を抜こうと腰に手を添えたらそこには無かった
「当たり前だろ。学生が刀を持ってるかっての」
銀時のツッコミが入り、桂は恥ずかしさも入り交じり、ずーん…と沈んでしまった
そんな桂を放っておくと次は女の委員長が入ってくる
「おー、妙ちゃん。おはよう」
「おう、志村か…」
「おはよう坂本くん高杉くん」
にこっと微笑む妙に銀時は目を反らす
それに気づいたのか、妙はすかさず銀時を見る
「ちょっと!時の挨拶ぐらいしなさいよ」
「あーはいはい、おはようさん」
「…なんで、目を合わせないのよ!?」
ムッとする妙を銀時は一向に見ない
「妙ちゃん、あんまり怒んないでくれとおせ」
「銀時は志村が大好きだからなァ」
ニヤニヤと笑う二人
「え…!?」
ほんのり頬を染める妙をよそに銀時は高杉と坂本の鳩尾を殴る
「うっせーよ!ってか好きじゃねーから!!こんなガサツな女!」
そう言いつつも銀時の頬は妙に劣らず赤い
「ハッハッハ!照れるなよ銀時」
いつの間にか復活した桂が高杉と坂本の代わりに一言言うも、鳩尾を殴られる
「ウゼェよ!違ーっての!コイツに惚れるくらいなら猿飛とか月詠のがいいね!」
照れもあり、妙に対する愚痴をたくさんこぼす
「だいたい―…」
「銀時」
「あん?何だよ、ズラの分際で」
「言いたい放題言うのは勝手じゃが…」
高杉がクイ、と顎で妙を差す
妙は俯いていて前髪によって顔が隠れている
――しまった…
「た、妙さーん…?い、今のはですね…」
下手に話すも妙は顔を下にしたまま、手があがる
――殴られる!!
ギュ、と目を瞑るも痛みはおろか、触られた感覚もない
そっと目を開けるとやっぱり妙は俯いていてあげていた手を下ろした
「…た」
「すいませんね!ガサツで!!」
妙はそう一言残して、教室を出ていった
俯いていたが頬に涙が伝っていたのはすぐに分かった
「あーあ…お妙ちゃんを泣かせるとは…おんし、やるのう」
「志村も泣くんだなァ」
「言ってる場合か。今のは銀時が悪いんだから追いかけて殴られてくるべきだ」
「…高杉、坂本、行ってきてやれ」
「俺ァ関係ねェだろ」
「右に同じく。…銀時、好きな女を泣かせたままにしとくがか?」
銀時はム、と口をつぐんでからガタッと椅子から立ち、廊下に出る
「ようやく行ったきに」
「世話のやける奴だ」
「後はアイツら次第だなァ…」
教室でそんな話をしていたのを銀時は知らない
「追うったって…どこにいんだよ」
出ていって暫くした後に彼女を追おうにもなかなか難しい話だ
「あ!ねえ、妙知らねェか!?」
近くにいた奴等に聞けば“屋上”と言う言葉を聞く
すぐさま屋上に向かうとドアは開いていて、明らかに誰かが入った形跡がある
「…妙?」
冷たい風でポニーテールを揺らしながら銀時の方を向く妙
「…銀時くん…」
少し目が赤いところから泣いていたことは明確だ
「ごめん!!」
頭を下げて謝ると妙は「別に、もういいよ」と言う
「私も…なんかごめんね?これからは銀時くんに近づいたりしないから」
銀時くん、私が嫌いでしょ?と苦笑いする妙
「ッ違う!…違うから…」
声を大きくしたせいか、妙は一瞬ビクリとしてから俺を見る
「そうじゃないから…アレはただ素直になれなかっただけで」
妙は黙って俺をまっすぐ見つめる
「全部、本心じゃない…俺はむしろお前のことが…妙が好きなんだ」
銀時はまっすぐ妙を見つめ返す
妙はしばらく呆然として、意味が分かったのか、赤くなる
「え…う、嘘!」
「嘘じゃねーよ。朝のは、その…お前の笑ったときの顔がかわいくて目ェそらした、だけ…」
語尾がだんだん小さくなる
妙はキョトンとしてからまた顔を赤らめ、次は微笑む
「…嫌われてるかと…思ったわ…」
「ごめん…傷つけて…」
妙は「ほんとにね」と笑う
「殴ろうかしらねぇ…」
「…」
ゾッとしたが殴られる覚悟はできていた
ギュ、と目を瞑る
またも痛みはないが、唇に触れた感覚があった
ゆっくり目を開けるとすぐそこには真っ赤になった妙がいた
「…これで、許してあげます」
そう残すと妙はパッと離れる
「も、戻ろう!?」
銀時はスタスタと先を行く妙をポカンと見つめてから今の状況を理解し、顔をにやけさせる
そして妙の後をすかさず着いていった―…
青春の一ページ
あのさ妙、告白の答え…良い意味に解釈するけど、い?
…か、勝手してください!!
※お妙が好きなのに素直になれず、暴言を吐いて傷つけてしまう銀さん。でも最後は気持ちを伝えてハッピーエンド
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