それは反則技
もう…
嫌になっちゃう…
「どした?お妙」
「…べ つ に!!」
折角のデートだっていうのに、この天然たらし!!
さっきからいろんな女に会っては会った女たちの目をハートにさせていく
そしてまた一人
「あ、銀さんじゃないか!」
「久しぶりだな鉄子」
鉄子さん…
確か一度だけ会ったことがあったなぁ、なんてぼんやり考える
彼女は元から銀さんに好意を抱いているだろうから正直、今は会いたくなかった人だ
銀さんと鉄子さんは一通り話が終わったようで
「じゃ、またな。もし、また何かあったらいつでも頼ってこいよ」
「なっ、…じゃあな!」
!!!?
仮にも彼女の前でその発言はアリなの!?
いや、自覚がないんじゃ仕方ないけど…
でもあれじゃ、鉄子さんだって誤解するわよ
現に赤面してたし…
また歩いていけば次は何やら柄の悪い男共に絡まれてる女性たちがいるではないか
銀さんは「ちょっと待ってて」と言うと私を差し置いてその中に割って入っていった
「…ンだい、にーちゃん?」
「何じゃ我エエェ!!こいつらの知り合いかィ!?」
「いや、只の通りすがりだ」
銀さんがそう言うと、柄の悪い男共はニヤニヤと黒い笑みを浮かべる
「何だ?正義の味方気取りかオイ」
「言っておくが俺等はここじゃかなり腕っぷし強くて有名なんだよね」
銀さんはへえ、と笑う
「じゃ、手加減は要らねーんだな?」
「手加減?そりゃあ俺等のセリ…ブフオアアァ!」
銀さんは只の一発、リーダー的存在の男にお見舞いすると、相手はすごい勢いでぶっ飛んでいった
「…散れ」
銀さんはたった一言を相手の仲間に告げると相手の仲間たちは「ギャアアア!」と悲鳴をあげながらリーダー的存在の男を抱えて逃げ出した
銀さんは男共が行ったのを確認すると後ろにいた女性たちの方を向く
「大丈夫だったか?」
「は、はい!ありがとうございます!!」
「助かりました!」
そこにいた二人の女性は銀さんにおじきをする
「二人とも無事なら良かったよ。次から気ィつけるこった。君ら二人ともかわいい顔してんだから」
「!…あの、良ければお礼にお茶でも…」
ああ、お茶…
お茶!?
だっダメに決まってるじゃない
銀さんは断ろうとしているがなかなか女性たちは引き下がらない
イラッ
「もう!!お茶でも何でも行ってきたらどうですか!!」
気がついたら思ってもないことを口走ってしまっていた
銀さんは慌てて私に近寄る
「っ来るな!銀さんのバーカ!!その人たちと遊んでればいいのよ!」
それだけ言い残すと私はその場を逃げ出した
後ろから呼ぶ声が聞こえたがそんなのお構い無し
確かに彼女たちが食い下がらないのが悪いけど銀さんだって強く否定すれば良かったじゃない!
彼女がいるんだから!
訳もなくしばらく歩いていくとアイスクリーム屋が前方に見え、ピタリと足が止まる
ああ、銀さんが喜びそうだ、なんて無意識に考える自分がいて何とも言えない気分だ
「捕まえた!」
「!?」
急に手を掴まれビクリと体が強ばる
が、すぐにそれは治まった
「…銀さんじゃない」
「はっ、はあっ…ったく…どこ行くんだよ」
「別に銀さんには関係無いわ?早く彼女たちと遊んでらっしゃいな」
すると私の手を掴んでいた銀さんの手の力が強くなる
「銀さん、痛い」
そう訴えると銀さんは「悪ぃ」と手を離す
「怒ってる…?」
銀さんは、おずおずと聞いてくる
「もう…いいわよ。銀さんはそういう人って分かってたから」
「そういう人って…?」
「…ほんと、大変ですね〜あなたって人は。怒り通り越して呆れてきたわ…」
わざと刺々しく言ってるのが分かったのか銀さんのテンションはやや右下がりになっていく
私ははあ、とため息を吐いて前方のアイスクリーム屋を見る
「お、お妙!アイスクリーム食べない?」
銀さんはそれを察知したのか、機嫌を取るべく私にアイスクリームを勧める
「…食べる。銀さんのオゴリで」
銀さんは苦笑いして「わあってるよ」と言うと私をつれてアイスクリーム屋に入った
銀さんはイチゴアイス、私はチョコレートを買って、アイスを舐める
「うめえな」
そんな子供みたいな笑顔して私を見ないでよ
何か照れる…
「良かったですね」
ツン、と言い返す
かわいくない?そんなの自分が一番知ってるわよ
しばらくパクパクとアイスを食べていると銀さんにガン見される
「…なんですか」
若干睨みをきかせて銀さんを見ると銀さんはクスリと笑う
「いや、やっぱお前かわいーな、って」
「むぐっゴホゴホ!何ですか、いきなり!?」
流石にいきなりそんなことを言われてしまえば心臓はビクリと跳ね上がるわけで
銀さんはその態度を見てさっきより分かりやすく笑う
「…なんか馬鹿にしてるんですか?」
「ちげーよ。反応が分かりやすすぎ」
それ、やっぱり馬鹿にしてないかしら
そう問うと「してない」と手をブンブンと振る
「あ、お妙、」
「は、いっ!?」
急に銀さんの手が口元に伸びてくる
「付いてる」
そう言って銀さんはすくい取ったアイスを自分の口に持っていく
「あー、チョコもいいな」
「…銀さん」
「ん?何?俺の、欲しい?」
いや、違くて
「まさか、こういうこともしてるんですか?」
「は?」
「だから…指で拭いとって自分の口に運んだり…」
銀さんは「いや、」と答える
ホッとしたのも束の間
銀さんは私の耳元に口を近づける
「お前以外にはしたことねえよ」
それは反則技
あ、当たり前です!!と言うか普通は彼女を前にして他の女の子と親しくするなんてあるまじき行為よ!?
?そうなのか?
(その天然たらしっぷり…早く治ってもらわないと…)
※銀さんの天然たらしっぷりにお妙さんが呆れる
×