認めない!
「ただいま」
「「お邪魔しまーす」」
「あら、新ちゃんお帰りなさい。銀さんと神楽ちゃんも、上がって下さいな」
すっかり空は夕焼けの赤に染まる
今日は姉上の仕事が無いので、みんなでご飯を食べようということになった
「じゃあご飯作るから待ってて下さいね」
居間について、みんなが腰を下ろした後スッとその場を立つ
「いいわよ、私がやるわ新ちゃん」
自信満々でキッチンに向かう姉上
いやいや、勘弁してください!姉上の気持ちは嬉しいけど…!
「あ、姉御!今日は私が新八と作るアル!だから座っててヨ」
身の危険を察知した神楽ちゃんが颯爽とキッチンへ向かう
「そんな…神楽ちゃんに悪いわ」
「ほっとけ。新八がいるから安心だろ。てか、お前じゃなければ命は安全だから大丈ブベラアアァ!!」
姉上の拳が銀さんの頬にヒットしたようだ
姉上はにこにこと、笑顔を絶やさないがその笑顔は怖かった
「じ、じゃあキッチンへ行こうか神楽ちゃん」
「お、おうヨ…」
二人してひきつった笑顔をしたままキッチンへ向かう
料理をしていると、どうやらまだ喧嘩しているらしく(と言うか、一方的に銀さんがやられているようだが)銀さんと姉上の声がしっかり耳に聞こえる
「…なんで仲良くできないかなあ」
はあ、とため息をついて神楽ちゃんに同意を求めようとしたが神楽ちゃんは逆だった
「…いや、仲良いダロ」
「え?どこが!?」
「ただの夫婦喧嘩にしか見えないし聞こえないアルよ」
「えっ!?」
そう言われるとそうかもしれない…
「いや、でも…」
「もう付き合ってどれぐらいアルかなあ〜…?」
「は!?」
まるで独り言のように呟く神楽ちゃんを見る
僕、知らないんですけど
「あ、新八は知らなかったアルか?」
「…むしろなんで知ってんの?」
なんでって、と横目で僕を見る神楽ちゃん
「見てりゃ分かるアル。ありゃ、夫婦のやり取りアル」
「うそだああ!!」
「嘘じゃないアル」
だからそろそろ姉御離れするアルよ、と警告され信じたくない現実に突き落とされた
方針状態になっていると神楽ちゃんがひょっこりと僕の顔を伺う
「新八は…嫌アルか…?姉御に銀ちゃんは…許せないアルか?」
「…ううん。姉上を取られるのは癪だけど、嫌、じゃないよ?」
「…ホントに…?」
「別に…姉上が選んだんなら別にいいよ。いつかこうなることは分かってたし…むしろ銀さんなら任せられるよ」
姉弟じゃなければ良かったのに…
そう思ったことは数知れず
でも、現実は変えられないんだから仕方ない
「けど、意地悪はしちゃうかもな〜」
不安そうに僕を眺めていた神楽ちゃんに相違って笑うと、神楽ちゃんも『そうアルな』と次は同意した
「おまたせしましたー…」
「ご飯アル…よ…」
ピシィ!!
眼鏡にヒビが入る
「「あ…」」
「銀ちゃん…姉御……新八…」
神楽ちゃんが苦笑いを浮かべている
僕は止まったまま
姉上と銀さんがキス手前でいたのだから…
「…し、新ちゃん…」
「あー…新八、落ち着いて…」
「お前なんか認めるかアアァ!!」
「ギャアアァ!!」
「おい、新八お前、さっき銀ちゃんならいいって…」
「前言撤回じゃアアァ!!」
認めない!
姉上離れはまだまだ先のよう
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