妬いてはない ムカついただけ
「銀さん」
「…」
「銀さんってば」
何度もお妙は俺を呼ぶが俺は徹底して無視して何処に向かうわけでもなくフラフラと歩く
何故無視してるかって?
ついさっき見ちまったんだよね
土方くんと仲睦まじくアクセサリーショップに居るところ
マジ何なの?
何で土方!?
俺誘えばいいじゃん
てか土方も土方だよ
自分に彼女いるくせに人の彼女に手ェ出しやがって
「ちょっと銀さっ…」
中途半端に言葉が途切れ心配になって後ろにいるお妙の方を向く
どうやら草履の鼻緒が切れたのかしゃがみこんでいる
「…お妙」
お妙の近くに駆け寄って同じ目線になるようしゃがみこむ
「…銀さん…」
お妙はそう言って微笑む
「…大丈ブッ!?」
そして俺の頬にグーでパンチを入れたのだった
「っなっ…」
何すんだよ、と言おうとしたが言えなかった
…泣いてる?
正確に泣いているわけではないが目が少し潤んでいる
ここで大丈夫か、と心配をするより可愛い、と思ってしまう自分はSなんだなーとしみじみ思う
と、まあそんなことは置いといて殴られた頬を擦りながら「ごめん」と頭を下げる
「本当に。なんで無視なんかするのよ」
「…だってムカついたから」
「はあ!?」
何にムカついたっていうの、とお妙は頭の上に『?』を浮かべる
何にって…
「アクセサリーショップ…土方くんといただろ」
「へ…ああ、いましたよ」
なんともあっさりと返事を返すお妙になんとなくムカッ
他の男といるのを彼氏にバレた彼女は焦り出したりしないのか?
少なくとも逆の立場ならある程度焦るんだけどそれは俺だけ?
「…土方くんと何してたんだよ」
「何って…買い物ですけど」
「買い物なら俺誘えばいーんじゃねーの?」
「…そんなこと土方さんに言えばいいじゃないですか」
「!?土方に誘われたのか!?」
なんて野郎だ
彼女いるくせに人の彼女まで…
「ええ、女ってどんなプレゼントだと喜ぶんだ?って聞かれたんで協力したんですよ。彼女のことは知っているからその人に似合いそうなアクセをいくつか探していたのよ」
「………え?」
「?」
「ちょっ待てよ…つまりお前は土方くんとデートしてた訳じゃなく」
「お買い物…プレゼント選びの手伝いをしてた訳ですけど」
なんだ、つまり俺
一人で勘違い?
バカだ俺はー!!
誰か俺を殺してくれ!
「…もしかして」
「さあ、帰るぞ。送ってく。」
お妙の切れた鼻緒を取り合えず応急処置してパッと立ち、すかさず前を歩く
「もしかして銀さん」
「うるせー」
「ヤキモチですか」
くすくすと後ろから笑い声が聞こえてますます顔が赤くなる
「言っとくけど違うから」
妬いてはない ムカついただけ
くすっ
うるさい
やっぱり妬いてるでしょ
違えっ
×