認めたくなかったのに
「しばらく私に話しかけないでくれませんか」
「え?」
正面でお茶を飲んでいる銀髪頭―銀時は目を点にして私を見ていた
「?なんで?」
「何でもです」
頑なにそう言えばなにやら機嫌を損ねたのか一気にお茶を飲み干すと
「…ごっそさん」
と言って出て行った。
しばらくした後、ホッと力が抜ける
―これで良かった
その場を立ち、ハーゲンダッツを食べようと冷蔵庫を開ける
無かった
代わりに小豆バーや、チョコレート、イチゴ牛乳…
「何よこれ」
今まで私が買ってたの?
なんで私が買ってるのよ
おかしくて笑ってしまう
とりあえず、目当てのアイスが無かったので
買いに行こうと外へ出る
マーケットに行って1ダースほどハーゲンダッツを買った
「そこの彼女〜」
声をかけられ振り向くといたのはいかにもチャラい男たち
―ナンパか…
予想は的中
「俺らと遊ばない」
「遠慮するわ」
さらりと返してその場を離れようとしたが、言い方が悪かったのだろう、少し強めの力で腕を引っ張られる
すぐに撃退しようとしたが、相手の男の数は3人ほど
しかも若干…いやカナリ強そうな輩で身動きが取れなかった
「ちょっと〜冷たいんじゃない?」
「離して」
負けた感じがするから、おとなしい態度なんかとらない。
その性格のせいもあってかどうやら挑発してしまったようで…
「なんだその態度」
「誘ってやってんだからよォ」
「誘って、なんか頼んでないわ」
「女だからってなあ!」
殴られる!!
ぎゅっと目を瞑っていたが痛みどころか触られた感じもしなかった
それもそのはずだった
目を開けて見ればナンパしてきた男の拳を銀髪の男がとめていたのだから
「ぎっ銀さんっ」
銀さんは私の方を見ずナンパ男に目を向けていた
「誰だお前」
銀さんはナンパ男の問いかけに薄ら笑いをする
「な、何がおかしい!?」
「いや?おかしくなんざねーよ」
むしろおかしいのは俺の方、と笑う銀さん
「あー俺はコイツの彼氏とかじゃないから」
その言葉を聞いて胸がズキリと痛む
ただね、と付け足す銀さん
「コイツは大切な女だからダメなの」
そう言うと私の手を引っ張って自分の背中に私を隠す
そんな中私は心臓が頭に響くほど鳴っていて気が気じゃなかった
「分かった?分かったら散れ」
銀さんがそう言うとナンパ男達は大人しく何処かへ行ってしまった
「…あ、ありがとう、ございます」
「…別に」
未だに私とは目を合わせるどころか顔を向けない
「…ごめんなさい」
「なんで謝んの」
「なんでって…」
「謝るべきは俺なんだろ。きっと知らねーうちにお前に不愉快なことしちまったんだろ」
だからごめん、とようやく顔をこちらに向けて頭を下げる銀さん
違う、違うんです
あなたは何も悪いことなんてしてない
「銀さん…あの…これで喧嘩は無かったことにしませんか」
「お前が許してくれるなら」
「良かった…」
彼を突き放したときの安堵感より今の方が心地よかった
どうやら私はやはり認めなくてはいけないようだ
認めたくなかったのに
好きよ
思わせ振りな態度をする貴方が悪いのよ
絶対責任とってもらうんだから
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