きっと臆病なのは
「お妙さああん!ハーゲンダッツ買ってきました!!」
「ありがとうございます。ではさようなら」
お妙は近藤からハーゲンダッツを受けとると薙刀を片手に志村家から近藤を追い出す。
「ちょっ、お妙さんっ!せめてお茶しましょうよっ!
「しつこいゴリラねー。早く帰れコラァ」
なおも薙刀を振り回す。
「お妙、それくらいにしといたら?」
さすがに可哀想だと止めにはいる。
いつもこんなことをされているのかと、少し近藤に同情する。
「…ま、仕留めるには仕留められたのでいいですけど。」
そういうとお妙は薙刀を下げる。
「…ってぇ!なんで万事屋がいんの!?」
ようやく俺の存在に気づいたのかと半分イラつきながら「居ちゃ悪いか」と応える。
「なんか甘い匂いがしたから食べようと思って寄ったんだよ」
「全く…そんなことしてる暇があったら仕事探せや。あん?コラァ」
「俺が悪かったです、苦しっギブギブ!」
お妙に胸ぐらを掴まれて、首が締まる。
ようやく解放されると次は近藤に迫られる。
「万事屋、貴様っ甘い匂いってなんだあ!!お妙さんか!お妙さんなのかあぁ!?なんて厭らしい!!」
「勝手な想像してんじゃねーよ!お妙を食べるわけじゃないから!ハーゲンダッツを食べにきたわけだから!」
「誰がハーゲンをやるなんて言いましたか?図々しいんだよ。これだから腐れ天パは…」
「おまっ世界中の天パに謝れぇ!」
「万事屋話は終わってないぞ!いくら恋敵と言えど抜け駆けは卑怯だぞ!!」
「うるせーよ!お前と恋敵になった覚えはない!!」
「なっただろうが!お妙さんをかけて決闘したり…」
「すいません。俺、過去は振り返らない主義なんで」
そんな言い合いを繰り広げているとお妙が はあ、とため息を吐く。
「何気に仲がいいんだから…。仕方ないわね、今日はお茶、3人分用意するわ」
「え」
「!お妙さんとお茶できるなんて!いつか二人でお茶しましょうね!」
「そんな日は来ないわよ」
そう微笑むとお妙はお茶を作りにいった。
その間に近藤が座布団に座る。
俺はただ呆然としていた。
「万事屋?」
「!あ、な、なんだコノヤロー」
「なんでいきなり喧嘩腰!?」
「うるせー!」
その後もしばらく呆然としていた。
「ちょっと銀さん」
「ん、ああ」
「何に対して返事してるのよ。ついさっき近藤さんが帰ったのよ…」
マジでか。
気づかなかった。
でも仕方ないだろう。二人の話は俺を残して進むんだから。
なんだ、このゴリラコンビ仲いいじゃん。
…あれ?自分で思っといてへこんでる?
「銀さんもそろそろ帰ったらどうですか?神楽ちゃんが心配しますよ?」
「はいはい…
なあ、」
「なんですか?」
お妙はまだ残っていたハーゲンを口に含む。
「二人ですんの?」
「?何を?」
「近藤と二人でお茶すんの?」
「…ああ、…」
お妙はじっとこちらを見る。
?
なんかついてんのか?
「そうねぇ、お茶したらすんなり帰ってくれるなら、またお茶しようかしら」
予想外の答えだ。
きっとお妙なら「もうこりごりよ」とか言うんじゃないかと安心していたのに…
って安心ってなんだよ。
「…マジでか」
「ええ。」
「ダメって言ったら?」
何を言ってんだ俺は
彼氏でもないのに
するとこれも予想外
「じゃあやめます。」
ニコッと笑うお妙は「そうしてほしいんでしょう?」と訴えているようで。
「確かに近藤さんと二人なんて何されるかわかったもんじゃないわ」
「あいつは臆病だからそんなことしねーよ」
「そうかしら?」
クスクスと笑われ
それはまるで俺の心境をわかっているのかと少し心臓が跳ねた。
きっと臆病なのは
近藤じゃなくて俺のほう
だってあいつは気持ちを伝えられるだろう?
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