水底の夜光虫 | ナノ

▽ 大人しく攫われる保護者


やっぱり私を殺すのが君で良かった。
白い粒子になって消えようとしている世界の中で、その言葉と共に始まった。
終わりは始まりではなかったが、言葉の真意は気付いていた。











どんとこどんとこ山道を歩く大きな豚と巨人族の少女。
豚の背中には帽子のように建つ一軒の家。
それこそが七つの大罪団長が営む移動式酒場である【豚の帽子】亭だ。
三日前にバステ監獄を破壊し、つい昨日ダルマリーにてクレイオスを拉致った一行は進路をダルマリー東の山道へと向けていた。
店の中ではメリオダス、バン、ホークが地図を囲んで進路の確認をしており、それを窓際でディアンヌとエリザベスの様子を見ているクレイオスが聞いている。
昔、バンに基本的な事柄を教える為に覚えた地図がまだ頭の中に残っていたクレイオスには、地図を見ずともメリオダス達の会話でどちらの方面から来てどこに向かっているかがわかった。

「ここがエリザベスとオレ達が出会った所。白夢の森でディアンヌと再会……」
「そんで今はダルマリーを東に出た山道だよな?」
「(このまま行けば死者の都が近いなぁ……)」
「目的は王都だろ?だったら南西の街道じゃねぇかよ〜〜」
「(下手したらヤンデレメンヘラサイコパスクソ生ゴミ野郎に見つかって見つける可能性も無きにしも非ずだよね?ヤバい逢ったら殺す死んでても殺す世界崩壊させてでも殺しそう留守番許されないかな?)」
「うんにゃ、王国からは一旦離れる───って、何でクレイオスは殺気立ってんだ?」
「ありゃあ思い出し殺意だな。思い出し笑いとかあんだろ?あれの一種でなんかムカつくことでも思い出してんだよ♪」
「アイツどんなヤバい人生送ってんだよ!!」

ホークの盛大なツッコミに気を散らされて殺気を仕舞ったクレイオスは何事かと徐に二人と、そして一匹の方を見る。
普通ならばクレイオスより身長の高いバンに見下ろされた方が本人がそうせずとも威圧感や圧迫感があるだろう。
しかし時とタイミングが悪かった。
元から6.0フィート前後といった女にしては高い身長を持ち、つい先程まで殺気を垂れ流していたのだからいつも通りである据わった三白眼で見られれば殺されるのではと恐怖を感じる。
実際、見下されたホークの脳内には自分の呼び名である豚丼の枝肉からの一連の作成工程が思い浮かび、調理されまいと泣きながら外へ逃げて行った。
ただ見ただけのクレイオスには何故ホークが泣きながら逃げたのかわからない。 
慰めるように頭と肘辺りをポンと叩かれたので自分に非があるのはわかったが。

「で、さっさと行かないのはどんな浅知恵から?」
「ソルガレス砦につづいてバステ監獄をぶっ潰したんだ。王国…聖騎士側は警戒を強めてるはずだ」
「今は目立つ行動を避けとくのが吉ってことね」
「十分目立ってんだろ〜が♪」

バンの言う通り山道の横面積を目一杯使ってしまっているホークママと、通常の数十倍はあるディアンヌを目立っていないとは嘘でも言えない。
家が揺れないのを不思議に思いつつも否定はしないクレイオスと目立つことはわかっているメリオダスはバンの言葉から目を背けるように窓の外を見る。
地響きのように家の中に響く音に、ホークママが何か喋っているようだが別段、女子二人組の話しを意識して聞いていたわけではないメリオダス達は内容はわからない。
テヘペロ☆とでも表せそうな表情とポーズをとっているディアンヌと、口元に手を当てて清らかに笑うエリザベスを見ながら、メリー少年はどっちがタイプなのよ?一点差でエリザベスだな。そういうクレイオスは俺とバンどっちがタイプなのさ。勝手に俺を選択肢に入れんなよ♪強いて言うなら拾ったばっかなのにすぐ懐いて事ある事に目ェキラキラさせてたバン(幼少期)かね。お前……ショタコンか!死ね。後ろにひっくり返って背負った剣の柄が後頭部直撃して死ね。なんて会話が飛び交っていたことを外にいる女子二人も知らない。







クレイオスはディアンヌ派



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