水底の夜光虫 | ナノ

▽ 気になる女の子達の会話


「で、結局お前は誰なんだ?」
「今んとこ名前はクレイオス。さっきも言ったけど向こうでの仕事が嫌になって外交官の腹ん中に花火仕込んで自主的に休みもらってこっち来たんよ。それから一応言っとくけどバンのお──」
「「女か?!」」
「そうそう、俺の女な♪」
「バンはちょっとの間お口ミッフィーちゃんにしてよっか?女じゃなくて親ね。メリー君と豚丼は後で家裏来いよ」




襲ってきた聖騎士を撃退し、バン様と合流してから今日で二日目。
病院だからということもあってこの二日間静かだったのだけれども、今はなんだか廊下が騒がしい気がする。
怪我はまだ癒えていないけど少し歩けるようになったからリハビリも兼ねて廊下を覗きに行けば、バン様が何かを抱えて向かいの部屋に入って行くところでした。
騒ぎの原因だったホークちゃんが入れないようにとドアを閉めてしまったのでバン様が何を持ってきたのかわかりません。
あとからダナ先生が駆け込んで行きましたが、診療が済むには早いほどすぐに出てきました。

「ダナ先生、何かあったのですか?」
「ああ、頭を打って気絶したらしい者をね、彼が連れてきたんだよ」
「そうだったんですか」

打ったとされる後頭部に怪我どころか砂一つ付いてなかったのは不思議だがね。
そう言って他の患者さんの所に行ってしまったダナ先生を見送り、向かいのドアへと視線を向けたけど返事が返ってくるわけじゃない。
でも、なんだか気になります。
一瞬だけ感じ取った不思議な魔力に惹かれているのかもしれません。
ホークちゃんがメリオダス様を連れてきてくださり、興味本位で覗いてみようとなった時、野暮かもしれませんが少し心がときめきました。

「多分拾われてきたやつはクレイオスってやつで間違いないと思うんだけどな。あいつ、酔うと必ず見つけだしたら拉致って監禁して一緒に酒飲むつってたし」
「ああ!そういや合流したあの日も俺を枕にしときながらクレイオスの膝枕のが寝心地いいとかぬかしてやがった!!」

バン様をよく知るいい機会だと思ったのですが……なんでしょうか。
このドアを開けてはならない、開けてはいけない気がしてきました……

それからそれから色々あって、冒頭へ至ります。




猫っ毛頭にハスキーボイス、胸にはベルトが幾重にも巻かれた一見男性か女性かわからないクレイオス様を躊躇いなく女性と言い放ったお二方。
当の本人はバン様に抱きつかれて骨がイヤな音を立てているというのに何ともないかのように表情を変えません。
親……と言っていますが不死者であるバン様の母親だからクレイオス様も不死者なのでしょうか?

軽やかに進んでいってしまってる会話に乗り遅れてしまったので、同じく窓の外にいる所為で会話に入れなかったディアンヌのもとで肩身を寄せます。
あれ?なんでメリオダス様とクレイオス様が話しているというのに静かにディアンヌの近くにいれるのでしょう?
メリオダス様のことを慕っており、出会った時には強烈な嫉妬心を見せてくれたディアンヌですが、今は何やら複雑な表情のまま片手は髪を弄っています。

「ディアンヌ?どうかしたの?」
「んー……あの人の魔力、なんかどっかで感じたことがあるようなないような……」
「ディアンヌもクレイオス様の魔力が気になるの?」
「エリザベスも?……まぁ、バンの親ならば魔力の気配が息子と似ててもおかしくないか」

どうやら違うことに気が散っていただけみたい。
どうしてその体制になったのかはわからないけど、仰向けになったバン様に脚と腕を使って固定されたクレイオス様がまた仰向けに乗っていて、その上に馬乗りになったメリオダス様がクレイオス様の跳ねた長い横髪を握っているというよくわからない状況を纏めて掴み上げて地面に叩きつけることでこの状況を打破してくれました。







なんかエリーが黒い。




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