以蔵が望んだ邂逅は

※オリサバ(ナマエ)←←←以蔵
ナマエは深夜廻のコトワリ様の成り代わりみたいな設定。



私は片田舎の神様だ。
今や私の祀られていた神社もダムに沈んでしまい水が少なくなった時にしか水面に顔を出すことができない無力でちっぽけな神様だ。
元は人間の医者で性別を隠して育てられ、妖の領域に迷い込んだ折に己の寿命と引き換えに"死なせず解体する切り方"を教わり幾人もを施術してきた。
技術の代償を寿命にしたものだからすぐに死ぬと思っていたがいつまでも死なず、親友だった者の曾孫が晒し首になった姿も見てしまう程に生きていた。

分け隔てなく治療をする私が気に入らなかったのであろう者達の刺客に殺され、哀れんだ者達の手によって神社は建てられ、私は神にされた。
まだ生きなければならないのかと落ち込んだりもした。しかし病を断ち切ってくれ、腫れ物を切ってくれと願いに来る者達がいる限りは仕事をしようと思った。

次第に私はイヤなものを切る神にされていった。
誰かが誰かの真似をしたんだろう。
「もういやだ」そう言えば対象が何であれ切ってくれるとされ、遂には人を殺すことまでもを願われ、そして叶えさせられるようになっていた。

カチリ、と未来が大きく3つに分かれたのがわかった。
1つは人類の破滅、1つは存続、もう1つは停滞とでも言えばいいのだろうか。人に干渉しない神達だったら好きに3つを行き来するんだろうけど私は人と歩む末端の神。
ただ流れる時間と共に進む未来を享受するしかない。



足音が聞こえる。
それに声。男の声だ。口調は苛立ってるけど涙声に近い。
「マスター、マスター?まったく、どこにおるがよ?」
土佐の言葉だ。行ったのは数回だけだが色々あったからよく覚えている。
落ち葉を踏む音から石畳へ。今では懐かしい格好の男は色褪せた鳥居を潜り境内へ入ってくる。
「ます」
ター、とは続かなかった。



続かない!!



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -