サバゲ部大将は荒北の従姉

俺には双子の姉貴がいた。
普通、双子は似るとか言うけど俺と正反対で真ん丸な、だけどどっか鋭い気もする鳥みてぇな目だとか渋い灰色混ぜたみたいな緑色の髪、それでもって一番の違いは寛大な性格だった。
菓子取っても叩いても、パシりに使おうとしたらさすがに手間賃取られたけど大抵のことは許してくれるやつだった。
いたとか、だったとか過去形なのは中学卒業と同時にいなくなったからだ。
その前にも一瞬、いなくなったけどどこに行ったかすぐにわかった。叔母さんの家だった。
養子、ってやつにされたのかと連れ戻しに行ったら会わせてももらえずに俺とは兄弟じゃなかったこと、血の繋がった親は自分達だとだけ教えられて追い出された。

正直嘘だと思った。
小学校ん時には俺が上級生にリンチされてたら来んなつっても俺を餌に鉄パイプでバックアタック仕掛けて助っ人しに来たり、中学で野球部入ってからはバット担いで来て自主練に無理矢理付き合ってきたり色々されたけど、いないと違和感もあったからやっぱ自分の片割れなんだな、って何度も再確認した。
荒れてた時期も重なって話し掛けんのも掛けられんのも面倒だった親に覚悟決めて聞いたら目を逸らされた。
その反応で思い知らされた。叔母さん達の話しが本当なのだと。

家からはいなくなっても受験シーズン後半ギリギリな学校には普通に来てて、教室から拉致ってもいつも通り文句の一つもこぼさなかった。
授業中に拉致られても怒らなかったのはまともな授業がなかったのと同時に仲のいい友達もいなかったからだと思う。
ミリタリーオタクで愛読書は月刊サバイバルってサバゲー雑誌で趣味は情報収集で特技が記憶にそれの複製だなんて意味わかんねぇヤツと友達になるヤツなんて異性でも同性でもいるわけない。
ま、いつもは文句こそ言わないもののなんか駄弁るはずのあいつが何も言わない時点で違和感に気付いてりゃ、追い詰められてることに気付いてりゃあいつは総北なんかにいなかったのかもしれない。

実の両親を訴えて社会的に潰したあと、どこかに消えたあいつを見つけたのは東堂だった。
学生証ん中に入れてたあいつの写真が見つかってからかわれるかと思いきや意外なことを言った東堂。

「巻ちゃんの彼女の写真をどうしてお前が持っているのだ?」

東堂の言う巻ちゃんが誰かだなんてわかりかきってることで、聞いてもいないのにベラベラ喋ってくれる情報が疑心から確信にかわってく。
全高校の中で唯一総北にあったらしいサバゲー部に入る為、家の諸事情でそこを選んだこと。
一度生返事されたことがあってちゃんと聞いているのかと憤慨したら一字一句間違えずに復唱されたこと。

東堂を半ば脅して巻島に連絡を取らせれば今日は大会が行ってるから多分連絡してもムリ、でもよくいろんなスポーツ取り上げてる番組が生中継してるから様子だけなら映るかも、と情報くれたもんだから部室のテレビ点けてみたら俺が覚えてる姿よりちょっとだけ大人になったあいつがインタビューされてるところだった。

『それでは第1回MBT(military battle tournament)優勝チーム【泡沫】メンバーである梟さんにお話を伺ってみましょう!よろしくお願いします!』
『はい、よろしくお願いします』
『本日はチーム【泡沫】ではなく【戦人】での参加とのことですが……』
『【泡沫】メンバーは各地方に散ってるものでして召集がかけにくいんですよ。で、今回は高校の看板背負った部活メンバーで来たわけです』
『なるほど。本大会では平均年齢最年少チームで経験が少ないと言われていますがどうでしょうか』
『定例会等でお会いになった方々は知ってるとは思いますが、丸々1年間50キロ抱えて急斜面登下校させられた成果は期待してくれていいと思いますよ』

姉貴がいた。
今も昔も変わらない淑やかな笑顔でエグいことを平然と言い放つ姉貴だ。
ねーちゃん、なんて無意識に呟いていたのを聞かれたらしく巻ちゃんの彼女が荒北の姉だと?!似てねぇ!靖友との類似点が一切見られねぇ!!む?耳と口の形が似てると思うが……なんて言いたい放題言われたけど画面から目が離せなかった。
福チャンにはあとでベプシ奢ってあげよう。
姉貴は炭酸水派だったけど勝手に飲もうとしたら前もって振られてて1回地獄を見たからもう飲みたくない。特に緑のガラスビンのやつ。

初戦第1試合目から姉貴達の出番で、人数が少ない方に合わせて5対5になった中に勿論あいつは混じってた。
フィールド内では定点カメラと出演者の側頭部に着けられたカメラで見れるらしいそれは転々と違う場所を映しながら相手チームの拠点を映し、次に姉貴達のチームが映ったのだが東堂が大丈夫なのかと心配するほど相手との気の張り具合が全く違った。
相手は画面越しにも見て取れるほどピリピリしてるにも関わらず姉貴達はゴーグルとメッシュマスクでわかりづらいけど相変わらずのほほんと笑ってるあいつとゴーグルの上から片手で目を覆ってる中将って呼ばれてたやつ、ピリピリした空気に気付いて縮こまっちゃってるやつと緊張してガクブル震えてるやつら2人だなんて面子なモンだから勝敗なんて決まっちゃってると思われてた。

結果的に全員殺されたのは相手チームだったけど。

始まった瞬間に相手チーム拠点から姉貴達の方を向いた定点カメラが映したのは化け物の群れだった。

いつの間にか練習はどうした、って聞きたくなるような人数の気配が背後に立ってて姉貴達の試合に夢中になってた。
……オイそこらへん興味持ったみたいな目でねーちゃん見んじゃねェ。






荒北の声優である吉野さんが大好きなんで荒北兄弟(もしくは従姉妹)夢が書きたかったけどこれ以上連載候補増やすとヤバい。→大将主の過去とか決まってないしお前兄弟やれよ。
って経緯からこうなった。

梟は中学でやってた軽音部からの繰り越しニックネーム。



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