Village of Dali 真夜中地下殺人事件発生 充分な睡眠が取れたからと起きてみれば外は真っ暗。 少しの睡眠で事足りる私からしてみれば5時間も寝てしまったのか、って感じだけど、皆は一日振りのベッドだから私の二倍はぐっすり寝るんだろうな。 目が冴えてしまった私は残弾の少ない対戦車用ライフルを壁際に、ビビが使っているベッドの空きスペースで眠っているシュトラールをそのままにして誰にも気付かれないように宿屋を出た。 フードを目深に被って歩きながら拳銃用の残弾の確認をする。 普通だったら夜中に危険物触ってる不審者なんだけど、銃の存在をこの世界の人々は知らないし、夜の娯楽が無さそうなこの村を今、徘徊しているのは私ぐらいだから大丈夫。 通報されたりなんかしない。 ちなみに今は日付が変わって一時間後くらいかな。 ビビが見たがってた風車に入ってみれば上に上れるらしく、奥に梯子と手前には地下にいけそうな見るからに重たい鉄の蓋が設置してある。 「(興味引かれるのは地下だよなぁ)」 いかにも村の秘密ですって感じの方が気になるのは当たり前。 ってな訳で、誰か来る前に入ってしまおうと蓋を勝手に開けて、入って、さっさと閉める。 忍び込むなんて久しぶりだから何だかちょっとテンション可笑しくなってきた。 ヒャッホゥ! ……心の中だけでよかった。 ポーカーフェイスのままでいれてるだろうけど、誰も見てなくてよかった。 見られてたら死にたくなってた所だ。 ちょっと恥ずかしい。 壁が石でできている為か、ひんやりとした空気に少し身震いしながら一本しかない廊下を進んで行けば、まず一番に目に入る大きな樽。 それには何処かさんの城で見たような模様があり、何度か持ち帰りを楽にするようにとバラすのを手伝った覚えがある。 「(何でアレクサンドリア城で?……武器の詰め合わせセットってか?)」 中身は見せてもらってはいなかったけど、私が潜入した頃と同じ時期ぐらいから城で見るようになったとダガーが言っていたような気がする。 城とこんな辺境の村に関係が? まぁ、樽の事は奥を調べればわかるかもしれないから今は別のこと。 樽の近くには休憩所のような屋根付きのスペースとチョコボの飼育スペース、そして肝心のチョコボが上へと抜けている井戸から入り込む光を浴びてクゥクゥと寝ていた。 時間が時間だから仕方ないけどね、やっぱり起きてるチョコボが見たかったなぁ…… せっかく寝ているのだから起こしては可哀相だと抜き足で奥へと進めば、そこは人が入れそうなくらい大きな箱やら樽が乱雑に積み重ねられた物置みたいな場所が。 実は綺麗好き(+几帳面(ブランク談))な私にとっては、今すぐ片付けてしまいたくなるぐらい苛つく空間だけど我慢だ、我慢。 足音は立てずに素早く走り抜け出た部屋は、普通とはかけ離れていた。 霧の漏れ出る扉と、シュウシュウと音を立てながら継ぎ接ぎの卵を作る機械。 純粋に見ていない所為か卵の出口から少しだけ見える機械の中はおどろおどろしく見えてしょうがない。 機械の先は扉がある壁にめり込んでいて、何かが起こっているのだけはわかる。 その何かは知らないけど。 思いきって開けてしまってもいいだろうか? 一応モンスターが襲ってきても大丈夫なように銃に手を添えてはいるけど、何が出てくるかとわくわくしている自分が憎い。 もうちょっと危機感を持ちなさいディレーネ。 そっと観音開きの扉を開けば流れ込んでくる霧とモンスター。 忍び込み中、ってことでサイレンサーを付けといた銃でパスッとモンスターを撃ち殺しても霧が流れ込むのはどうしようもなく、そのまま扉の奥に入ってみたら凄い音と地面を伝わる程の振動を立てながら何やら機械が霧を吸い込んでいた。 「(なんだこれ?こっちの機械が霧を吸って向こうの機械が濃縮して卵にしてるってか?)」 何故そんな事を? 濃縮したら向こうでいうクリスタルみたいな機能が得られたりするのか? それの実験をこの村とアレクサンドリアが手を組んでやっていると? 全くもってわからないが卵がベルトコンベアによって流される方向にもう一本道があった筈だからそっちに行ってみよう。 そう思い振り向いた瞬間──── やってしまった。 こんな時間に誰も来ないだろう、って高を括って風車小屋の二階で見張りをサボりながら持参してきた酒を煽ってたら全く見たこともないようなヤツが地下に続く扉を開けて入っていくじゃないか! 律儀に閉めてってくれたところはいい人だけど、地下では他の村や町に知られちゃマズい楽して金が儲かる秘密の仕事を行ってる。 この村だけでやってるから儲かってる。 他の村や町に知られて真似されてしまったら俺達の取り分が減って、また苦労して働かなくちゃいけなくなってしまう。 そんなのイヤだ。 初めは脅すだけのつもりだった。 でも侵入者が霧の洞窟と地下を隔てる扉を開けてしまった所為でモンスターが入ってきた時に、短い曲がった筒みたいな物をモンスター向けて音もなく一撃で倒して行くのを見て怖くなった。 脅しなんて通用しないんじゃないか。 逆に見付かったからって俺もモンスターみたいに殺されるんじゃないか。 そんな思いが一瞬の内に頭を駆け巡って、気が付いたら振り返り掛けてた侵入者の胸倉を掴んで手に持ってた酒瓶を振り上げて─── 俺が先に殺してた。 ドサリと割れた酒瓶が散らばる上に倒れた侵入者(女、だった)は、俺が殴った辺りから留めなく血を流してフードと地面をどんどん変色させている。 生死の確認なんてできるほど今の俺に余裕はない。 一度は色が戻ってきたというのに、もう一度真っ白になる思考をどうにかして働かせた結果、俺が行動したのは棺のようなあの箱に侵入者を詰めることだった。 箱ごと樽に入れて明日出せばどうにかなるだろ。 そんな浅はかな計画が、どの箱かわからなくなることで潰れてしまうなど、酒が入って尚且つ混乱した頭では到底考えてもみなかった。 朝、集合を掛けたのに何時まで経っても来ないビビと、探しても見付からなかったディレーネを心配しはじめたダガーの言葉に出かけることにしたジタン。 だがやはり屋外を探しても見付かることは一向にない。 「大丈夫かしら、ディレーネ……」 「大丈夫だって!……これとこいつ置いてったのは許さないけど」 「ピギャッ」 ジタンの頭には覆い被さるようにシュトラールが乗っている訳だが、乗り心地が悪いのか何度も何度もモゾモゾと動いてはジタンに鬱陶しがられてた。 そんな彼の背中には対戦車用ライフルが。 宿を出るなら持って行けよと思うジタンだが、ディレーネが散歩に行った時間帯を知らないからそんなことが言えるのだろう。 「ま、ディレーネって面倒事に巻き込まれやすい体質だけど自己解決力も強いからどうにかしてるって!」 「面倒事に巻き込まれてるのは決定事項なのね」 本当に、巻き込まれていた。 |