「こ、これは違うんだ!名前!」
「嫌です無理です触らないでください」

プールではしゃぐレイスたちに断ってから、いつの間にか消えていた彼を探していた。
やっと見つけたと思ったら、隣にまだ年端もいかない少年を侍らせていたのである。しかも餌付け(?)をして。
焦りすぎてカクテル落としてるじゃないか、何が怪盗だ華麗さの欠片もない。
以前から自分の所属する怪盗団にはやけに子供が多いとは思っていたが、まさかこんな理由だったとは。
我がボスながら最低である。

「見損ないましたファントム様...いえぺドフィリア野郎様」
「口が悪いぞ名前!彼は以前色々あってからの知り合いで、」
「前から目を付けてたってことですか?あんた最低ですね」
「違うそうじゃない、そうじゃないんだ名前...!」
「怪盗のボスともあろう人が女に縋りつかないでください...ねえきみ大丈夫?この人に何かされてない?してなくても処分するけど」
「な、何も」

よかった、まだうら若い少年には害が及んでいないようである。
うちの変態がごめんねえと言って頭を撫でると、少年の赤い髪のように頬も少しずつ染まっていく。可愛らしい子だ。

「信じてくれ名前...私にはお前だけなんだ...」
「でしたら尚更タチが悪いじゃないですかファントム様」
「少年が偶然にも私たちと同様にプールに来ていたから、かき氷を奢っただけなんだよ」
「少年、この変態が言っていることは本当?」
「は、はい!これも何かの縁だから、って」
「へえ、そうなの」

疑いを晴らすことができたと思ったのか、安堵の表情を見せる彼に腹が立ったので、鳩尾を一発殴っておいた。こちとら伊達に怪盗という名の犯罪者やってないわ。
痛みに悶える我らがボスの襟元を掴み、引き寄せると、眉間に皺をよせながらも、宝石のような瞳を丸くしていた。

「名前、その、すまない」
「何がですかぺド野郎」
「いや、急にいなくなったのは本当に申し訳なかった」
「ほんと、なんなんですか、私たち置いて消えちゃうなんて、ふざけないでください」

レイスたちを心配させたんだから、いっそ縄で縛り上げておきましょうか?
そう言うと、あの自信に満ち溢れた笑みを浮かべて、それは勘弁してくれと私の頭を撫でる。
襟を掴んだまま背伸びをして彼に口付け、彼が驚いている隙にもう一度鳩尾を殴り気絶させた。
呆然としている赤髪の少年に謝罪してから、この外見だけはすこぶるいい男を引きずってプールサイドを歩く。
これから数日は、かわいい子供たちに手を出せないよう見張っているべきだろう。いや、いっそ縛るか。



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ファントムさんどう考えてもそっち系ですよね