おしどり夫婦と、街の奴らに呼ばれるくらいには仲がよかった。
しかし実際は、友人と呼ぶには些か近く、恋人と呼ぶには遠いような距離を保ってきた。

「大好きよ、ハンディ」
「俺もだよ名前」

こんな巷の恋人同士のようなやり取りも、彼女にとっては友愛によるものなのだ。
一体どこで間違えたのだろう。
わからないのも仕方がない、気がついたらこうだったのだ、どうしようもない。

「ハンディ、今度遊園地に行こうよ」
「いいけど、あそこのコースター、よく落ちるって噂だぞ」
「大丈夫だよ!ハンディは私が守るから」

ああ、かわいい。
主人を敬愛する犬のように、目を輝かせている名前がたまらなくかわいい。
頭を撫で回したいが、生憎両腕がないのでできない。
誠に遺憾である。

「それは俺の台詞だろバカ」
「きゃー、さすがイケメン」

茶化しながら嬉しそうに笑うのもかわいい。
この顔を見られるのは親友である俺だけなのだ、役得だ。
できれば照れて欲しいところではあるけれど。

「大好きよ、ハンディ」

弾んだその言葉に、自分の口角が上がるのがわかる。
名前の吐く言葉全て、漏らすことなく聴いていたいくらいには、俺はもう手遅れらしい。

「俺もだよ」

いつか本当の意味で伝わってくれたなら。