とりあえず殴っとく
「こーすけ、ジャンプ買ってこい」
そういって渡された1000円を嬉々として受け取り、俺はまんまと兄にぱしられたわけだが、おつりは存分と使わせてもらうことにした。
兄は察しているだろうが何も言わないので、多分黙認してる。
たまにはつかえるぜこいつも!
と、なんとなく西浦近くのコンビニへ行ったわけだが、なんとそこにはあいつらがいた。
「た、たじっ…まく…ほん、とに?」
「ああ!俺は決めた!買う!」
「で……でも………」
何をもめてるんだ?
いや、もめてるというより、何を言い合ってるんだろう。
「おーい、お前らー」
「っ!あ、泉だ!」
「い、いず、みく…っ!」
「何言い合ってんの?」
「実はさー、俺コンビニであれ買おうと思って!」
「あれ?」
「い、言わなくていぃ!」
「…三橋?」
「なんでー?泉知ってんだからいいじゃん」
「や、やだ………」
「………………」
えー、なんか嫌な予感してきたから、聞かないでおこっかなやっぱり。
三橋嫌がってるし、三橋の嫌がることしたくないしやっぱり話変えよ。
「俺、ジャンプ買いにきたんだ。兄のパシリで。お前らなんか欲しいもんないの?」
「え!なに奢ってくれんの!?」
「兄貴のお金だしな♪」
「い、いーの、!?」
「当たり前だろ。」
「「…っ!!」」
泉(くん)いい人ー!!
というキラキラした目線を向けられて、照れ臭さと恥ずかしさに思わず目をそらして、コンビニに入る。
いらっしゃいませー、という言葉を聞きながらまずはジャンプを手にとる。
「え、ジャンプって安いんだ」
「知らなかったのか?」
「俺、読んでねぇし。」
「えー!面白いぞ!読むべきだ!」
「あ、そう」
まあ、そんなことどうでもいいが、とりあえず今は腹減ったから何を食おうか。
三橋は目をキラキラさせながら、パンコーナーを見る。
あ、俺もメロンパン食おう。
「泉っていつもメロンパンだよなー」
「そうか?」
「うん、そんなイメージ」
「ふーん。三橋何食う?」
「えっと……え、と……これ!」
「よし。じゃあ、レジいこ」
「ちょっと泉俺もー!」
「えー…早くしろよ。五秒な」
「は!えっとー、えっとー…」
本気にしている田島が面白くて、泉は思わず笑う。
それを、ジーッと三橋が見つめてきた。
「??」
「あ、ご、ごめっ…その、ね…!」
気のせいか、顔が赤い。
それに否応なしにドキッとして、なんとなく、罪悪感に田島をチラリと見た。
田島はまだ何を買ってもらうか悩んでいるようだ。
「い、泉く……笑うと、かっこいい、なって…」
「っ!!」
「きーまった!これ!………泉?」
「へ?あ、ああ…」
なんだ?
なんだ?
なんだよ、今の!
柄にもなく顔赤くなっちまったじゃねーか!
三橋は多分、
超ド級の、天然タラしだ。
「ありがとー泉!」
「あ、あり、がと!」
「いーえ。ほら、食おうぜ」
「おう!」
沈みかけた夕日。
甘くてサクサクふわふわなメロンパン。
どうしようもなく鬱陶しくて馬鹿で面倒なこいつら。
…ついでに、照れ臭い気持ちと赤い顔。
コンビニの前で騒ぐ俺たちに、
カラスが鳴いた。
「あ、結局買い忘れた!」
「何を?」
「コンド「言わなくてい、い!!」
「…………。」
とりあえず殴っとく。
(三橋泣かせたら、俺が許さねえし)
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