1、衝動
ネズミは触れさせない。
セックスの時に僕はいつも怯える。
もしも彼の気分を害してしまったらと。
僕の欲望が奮えるままでも
彼の内面に疼くものがあっても
彼は容易く僕を払いのけるだろう。
だから僕は、この時ばかりは無口になる。
その恐怖はネズミを抱く代償のように僕の体を支配する。
普段から手入れをしているとは思えないのに
艶やかな髪がシーツを滑る様を
僕の手によって染まる肌を
そして僕が行く事ができるネズミの最奥を
僅かな時間だけ独占する。
熱っぽく吐かれるネズミの息を全身で感じながら
こんなにも近くにいるのに
僕はまだネズミに触れていない気さえする。
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