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「#切ない」のBL小説を読む
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- ナノ -

「はじめまして、アルスラーン殿下。私はティンベルと申します」

「私はアルスラーン。よろしく頼む」

 某日の午後。いつも通り朝稽古や勉強を終え、時間が空いたアルスラーン殿下の元にティンベルを連れてきた。殿下は新しい知り合いに気分が高揚しているようで、しかし何を話したものか戸惑っているようにも見える。

「私はパルス辺境の地の領主の娘です。王都の外のお話や旅のお話なら、いくらかできると思います。アルスラーン殿下は外に興味をお持ちで?」
「ぜひ聞かせてくれ!」
「はい。では今日は王都の外、わりと近辺のお話にいたしましょう。王都のあの立派な城壁を抜けると…」

 そう言って興味のある話を探り、殿下の興味の向くところに話を変えていくティンベルの語りはとても落ち着く。心地よい高さの声と分かりやすい内容、展開。聞いていて不安にならないので、興味を絶やすことなく聞いていられる。

「伝統工芸品も幾つかあるんです。父に習い始めたのですが、どれも作るのがとても面白くて」
「すごいな、そんなこともできるのかティンベルは」

 殿下が感嘆の意を示すと、ティンベルはそんなことありませんと首を横に振る。

「私ができるのは裁縫、料理、掃除など、習うものくらいです。突出して何かができるわけではないので…」
「それは凄いではないか。一人前に生活が回せるのは良いお嫁さんになれる」

 ダリューンは思わず息を詰まらせ咳込む。ダリューン様大丈夫?!とティンベルがお茶を差し出してくれるのを飲んで呼吸を落ち着かせていると、殿下が何かに気づいたのかニヤニヤしてこちらを見る。急に恥ずかしくなって、先ほどの話を進めるために口を開く。

「貴族の、それもティンベル並みの貴族の中にはそれをやってもらって自分はやらないというのが当たり前というところもあるのだぞ?」
「へえ…王都ではそんなことがあるのですね。もちろん王族がそのような生活をするのは分かるのですが」

 ティンベルが何かを考え始めたところで、侍女がやってきて殿下の夕食の時間であることを告げる。

「もうそんな時間か」
「すみません殿下、こんな時間まで長居してしまって」
「構わぬ、とても楽しかった。ぜひまた明日にでも来てくれ。楽しみに待っているから」

そうそう。

「私のもとに来るときは、ダリューンを忘れぬようにな」
「!!」

 慌てて殿下を見ると、殿下はニコニコ笑っていたずらが成功した時のような笑みを浮かべる。やはり、自分の中の事はばれていたらしい。
 しかしこの中でティンベルだけは訳がわからなかったようで。首をかしげながらも、

「わかりましたわ、殿下」

そう言ってとりあえず笑みを浮かべていた。



 殿下に別れの挨拶をしてから数分後、夕空の下、パルスの城下町をのんびりと歩く。のんびりと言ってもティンベルの歩くスピードに合わせてなのでそこまで遅くはない。

「今日はとっても楽しかったです!これからも数日こんなことが続くとは、とても嬉しいですし退屈しません」
「そうか、それなら何よりだ」

 隣で楽しそうに笑うので、こちらも明るい気分になる。そうやって油断した時、彼女は無意識ですごいことを言ってくる。

「もちろんダリューン様も一緒に来てくださいますよね?」

 とびきりの笑顔でそう言ってくれるとは流石はティンベル超可愛い。とは言わず、努めて冷静に、ただし笑みは忘れずに返事を返す。

「……ああ、もちろんだ。殿下に言われたし、それにティンベルの話は聞いていて楽しい」
「ふふっ、良かったです」

 これで今日の爆弾は処理しきったはずだ。ふう。

「ダリューン様、私のお願い事を叶えてくださりありがとうございます」

――ま た か ! ! !

「どういたしまして。…できることならできる範囲で叶えるから、いつでも言ってくれ」
「うふふ。ありがとうございます。ダリューン様にはお世話になってばかりだわ」

 努めて冷静に、努めて紳士に返事を返して会話を繋ぐ。そうやって話す間に彼女の家の前に着いた。

「それではまた明日!」
「――ああ、じゃあな」

――明日以降も会えるのか…!

 ダリューンは見送りのティンベルから背を向けて歩く。彼女が見えなくなってからしばらくの間、頬と耳を真っ赤にしながらにやけた。もちろん不審者と思われたくないので、片手で口元を隠す羽目になった。
 家に帰って伯父に笑われたのはなんというか…まあいいだろう。

▼ダリューンは ティンベルの好感度を上げることに 成功した!

二日目:彼女の好感度を上げる


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