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8月3日

 どうも、司波達也だ。
 九校戦前日深夜、すなわち当日、エンジニアとしての仕事を切り上げて宿舎に戻ろうとしていた。だが途中で異変に気付き、"よく見れば"不審者の侵入と幹比古の迎撃の過程が見えた。なので幹比古をサポートする形で魔法を発動して術式を吹っ飛ばし、幹比古の魔法で敵を拘束して今に至る。幹比古に警備を呼んできてもらって、俺はここで待機していたのだが、

「ぱんぱかぱーん。どうもー、警備員でーす」

 やけにふざけーーフランクな警備員がやってきた。しかも幹比古が呼んできたのではなく、勝手にやってきた。見た目は違うが、間違いなく彼女だ。思わずため息をついて軍の方の名前を呼ぶ。

「秋速か。何故こんなところに?」
「え、こんなカッコなのになんでわかるの?」
「"眼"を使わなくても、この態度じゃ一発だ。で、何故こんなところに?」
「そうかーだめかー。みんなは騙せたんだけどなぁ。んで、ここにいる理由?決まってるじゃない」

 何だ?と目をやる。すると、彼女はうふ、と笑って、

「よ・あ・そ・び☆」

と警備員の格好で言うものだから、半ば本気で呆れた。いくら可憐な赤茶色のショートヘアとカラコンの青がかった黒い瞳をもってしても、地味な色合いのパンツルックのおかげで色気からは程遠い。しかも腰には拳銃のホルスターが見えるあたり、完全に仕事中だ。
そこに、新たな気配が間近で登場する。気づきはしなかったが、慣れた人だ。

「夜遊びは困るぞ」
「あ、隊長」
「風間少佐」

 明澄と俺は姿勢を正す。明澄も姿勢を正すということは、彼は完全に仕事中だ。

「ずいぶん容赦の無いアドバイスだったな、特尉」
「秋速といい少佐といい、聞いておられたのですか」

 風間は達也よりはるかに長い期間を、明澄は達也より数年長い期間を、九重八雲に師事している。明澄に関しては、風間からも参考として教わっていることがあるはず。そんな彼らを、イデアにアクセスせずにすぐ見つけるのは困難だ。先ほどの明澄は気配ダダ漏れだったのですぐわかったが、彼女の本気モードは少々どころかかなり難易度が上がる。

「他人に無関心な特尉には珍しいのでは無いか?」
「あら、達也くんは意外と周りを見ていますよ。深雪や自分と関わりがあるなら尚更」

 明澄が面白そうに風間に伝える。こういう時、彼女がいかに自分を理解してくれているか分かる。そして同時に、それがくすぐったくも、ありがたくもある。

「そうか。では身につまされたか?貴官と似た悩みを抱えているあの少年に」
「あのレベルの悩みなら、自分は卒業済みです」
「つまり、身に覚えがあるということか?」
「……この者たちをお願いしてよろしいでしょうか」

 人の悪い笑みを浮かべて、それこそ容赦の無い追撃をしてくる風間に、達也は必死で話をそらした。その状況を見ていた明澄は笑いをこらえるどころか普通にクスクス笑っている。だが、風間が次に言葉を発する時にはもう笑みを消している。

「引き受けよう。基地司令部の方には俺の方から言っておく」
「お手数をおかけします」
「気にする必要はない。余計な仕事をさせられたのは貴官も同じだ」
「あのー、私は?」
「…仕事中だろう」
「未成年に夜間勤務はないでしょうよー」
「昼間遊んだんだからいいだろう」
「宿題やらないといけないのにー」

 明澄と風間のゆるいやり取りに、まるで本当の親子のようなやり取りに頬が少し緩む。しかし、それよりも聞かねばならぬことは聞いておかねば。

「しかしこいつら、何が目的なのでしょう」
「さてな。犯罪者の相手は我々の仕事ではないが……この連中、予想以上に積極的だな。技量も想像以上だ。達也、とばっちりには十分気をつけろよ。秋速もだ」
「ええ、ありがとうございます」
「気をつけます」
「達也、明日の昼にでも、ゆっくり話すことにしよう」
「そうですね。それでは失礼します。おやすみ、秋速」
「ああ、またな」
「おやすみなさーい」

 達也は二人に背を向け、宿舎へと歩き出す。明澄に会いたがっていた深雪には、先に会ってしまったことは黙っておこうと思う。

夜の警備は夜遊びではないぞ


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