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- ナノ -

 7月
 文科高校 文化祭
 教室棟3階

 一年生のとあるクラスに割り当てられた教室内。氷や雪の装飾がなされた見た目だけは涼しげなそこで、紺色のウエイター姿の男子生徒、青地に白いエプロンのメイド服を着た女子生徒が店番をしている。

「栗本!次こっち!」
「はいただいまー」

その中をメイド服で動き回っている高身長の女子生徒はそう返事を返すと、あるテーブルに立ち止まって注文の品を置く。

「ストロベリーと、チョコミントになります。ご注文は以上でよろしいですか?」

 丁寧かつ素早い手さばきでアイスとセットのコーヒーを置き、空になったプレートを胸元で抱えて男性客二人に笑いかけると、彼らは分かりやすく頬を染めながら頷く。

「砂糖やガムシロップはテーブル付属のものでお願いします。では、ごゆるりとお過ごしください」

 目をさらに細めて首を少しかしげる。そうするとどうやら客は引っかかるらしいーーとひどく冷めた感情で藤林響子に教わった知識を実践しながら、明澄は踵を返してまた新しい仕事を求めて厨房スペース、又の名を冷凍庫前に向かう。そしてそこで作業をしているクラスメイトの男子に話しかける。

「いやあ、よく売れるね」
「うちのクラスの美男美女のお陰だな」
「市川さんとかね。男子はハル…斉藤くんがなんだかんだイケメンだから、勧誘行かせると女子をガンガン引っ掛けてくるよね」
「そうだな。羨ましい、ああいう奴がモテ男ってやつなんだよなぁ」

 明澄は出入り口を見る。ちょうどその話題の彼が帰ってきたところで、明澄ちゃーん、と上機嫌で声をかけ、手を振ってくる。

「おかえり斉藤くん。モッテモテね」
「ありがたいよねー。でもなんだかんだ君もモッテモテなのには気づいてね?」
「…やたら写真撮られるのってそういうこと?」
「あ、そうそう。それよ。でさ、明澄ちゃんに会いたいっていう人達連れてきた」

 ジャーン、と悠が身体を横にずらすと見知った顔のいる集団が見えた。見た感じは高校生だが、どちらかというと明澄に共通点を持つ人が多いその団体は、見る人が見れば魔法師とわかる。そしてその中に、

「達也くんに深雪?!」
「明澄!」

声の主、司波深雪は私がびっくりしている間に駆け寄ってきて、何故か私の写真を撮る。理不尽。てかお嬢様設定どこいった。対照的に、それはそれはクールにやってきた達也くんは、

「何でその格好なんだ?」

超クールに話しかけてきた。

「目覚めたらこの格好だった」
「そうか」
「お兄様どうして納得するのですか」
「いや…だが深雪は満足していそうだからいいのかな、と」

 おいお前ら。明澄が青筋を立てている間に、悠は器用にカップアイスの注文を取っていく。そして、

「ちょうどいいから休憩取ってこいよ。ついでに宣伝も兼ねて。ハイこれ、注文の品ね。余ったやつは明澄ちゃん食べな」

注文の品をビニール袋に入れて明澄に手渡す。なんてことだ、ここに神がいる。

「あ、ありがとう斉藤くん」

 ありがたく抜けさせてもらおうと店番の腕章を外す。そしてそれを会計席の荻野に投げつけ、彼は何の文句もなく受け取るから凄い。以心伝心、ってやつか?

「ご配慮感謝します。明澄をお借りしますね」

 深雪が嬉しそうに笑いかける。おお、美少女の微笑みが発動した。案の定周囲の人々が頬を染めたりうっとりとその表情を見たのだが、

「どうぞどうぞ遠慮なく!」

一人だけケタケタ笑って手を振る少年、もとい斉藤悠。なんて男だ、あの堅物荻野ですら顔が赤いのに。これはやはり彼のバカっぷりを表しているんじゃあ…などと思いながら、明澄は普通科生と思われているが実は魔法師でひいては本当の一般人なんて二人くらいしかいない集団を引き連れて教室を出て行った。





 人気の少ない校舎裏。適当な場所を見つけて座り、とりあえずアイスを配る。紹介しよう、と達也くんがみんなの方に手を向けた。気恥ずかしいが、明澄は姿勢を正すと、笑顔を浮かべて四人を見た。

「彼女は栗本明澄。俺と深雪の友人だ」
「初めまして。神奈川の文科高校の一年、栗本明澄です。一応言っておくとBS魔法師ね。今日はご来場そして我がクラスの商品購入ありがとうございます」

 赤っぽい髪の子が手を差し出してくる。かわいい。というか陽性の美女。

「初めまして、明澄。私は千葉エリカ。エリカって呼んで」
「俺は西城レオンハルト。レオでいいぜ」
「私は柴田美月です。美月で構いません」
「僕は吉田幹比古。名前で呼んでくれると嬉しいな」

 一気に名前を言われるが、全力で頭に詰め込む。ふむ、千葉家の庶子に吉田家の息子とは、なかなかよくやるなあ司波兄妹。皆結構見た目いいし目の保養になる…いいなぁ魔法科高校。

「エリカにレオくん、美月、幹比古くんね。覚えたわーーなかなかユニークなメンツね。パーティバランスもいいかも」

 明澄は短時間で見抜いた情報を分析して、ドヤ顔で達也を見る。

「エリカは剣術、レオくんは多分ドイツ系、美月はお化けが見える人で、幹比古くんは古式ね」

 正解だ、と達也が苦笑すれば、深雪が相変わらずね、とニコニコ笑う。一方、初見で分析された彼らは慌てたようにこちらを見るのですこし言い訳をしておく。

「私、割と人のそういうところ見抜くのは得意なのよ」

「…明澄は頭がいい上に洞察力に長けているから、敵に回すと厄介だぞ」
「そうよ。お兄様が一目おくだけはあるわ。もちろん私も認めているけれど」

 で、明澄?

「文化祭で押し付けられた衣装が着れるなら、私のオススメも着てくれるわね」
「お願いご勘弁です氷の女王さま…!」

 結局、後日深雪チョイスの衣装を一着着ることで決着がついた。解せぬ。
 ちなみに彼らはその後文化祭を満喫して帰ったらしい。後日見せてもらった写真は笑顔が多くて良かった、と安堵したのは秘密だ。


本日のハイライト:

深雪の笑顔が効かない我が友人


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