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「ふあ…眠い…」

 朝、うつらうつらしながら職場への道のりをたどっていると、

「こちらの教師の方ですよね?!教師オールマイトについてどう思いますか?!」
「………えっと、」

 マイクとカメラに囲まれていた。
 突然のことに思考が止まる。何度か目をパチクリし、カメラやマイクを持つ人も目をパチクリしながら私の答えを待つ。しばらくして脳内が覚醒した私は変な声が出そうになるのを我慢しながら、いたって普通に返事を返す。

「あの、授業の妨げになりますので、生徒や教師に取材をするのはやめていただけませんか?それに私、取材されたくありませんから映さないでください」

 では、と彼らを躱して雄英の門を目指すが、しつこくまとわりついてきては照明やカメラを向けてくる。…このマイク分解して壊してやろうか、なんて思ったのは内緒だ。

「…えっと、そ、そんなこと言わないでほら!オールマイトについて、」
「映さないでください。私は全国放送されたくない」
「じゃあカメラ向けませんから!ねね、ほら!」
「答えるとも言っていません!退いてくださいお仕事が私を待っているんです!」
「そこをなんとか」

 私が逃げようとするとカバンやら服やらを掴んでくるマスメディアにそろそろ警察を呼ぼうかと悩み始めた時、

「オール…小汚っ!!なんですかあなた!?」

 私のカバンから他人の手を引き剥がし、マスメディアから壁になるよう目前に立ったのは捕縛道具に黒い服の不審者ならぬヒーロー。

「あ、おはようございます」
「おはよう。ーー彼は今日非番です。授業の妨げになるんでお引き取りください」

 マスメディアの動きが止まった一瞬で私とヒーローもとい相澤先輩は雄英の門を無事くぐる。これでもうマスメディアは私たちに近寄れない。素晴らしい防犯設備。

「ったく、うまくかわせよ」
「すみません、暴力に訴えるか警察を呼ぶかを天秤にかけていました」
「物騒なことすんな誤解受けんだろ。しかもあの場所でおはようございますじゃねえよ」
「もはや癖でして…ーー?!」

 いきなり背後で凄まじい金属音がしたので肩を揺らす。振り返ると雄英バリアーレベル1が閉まっていて、隣の相澤先輩がため息をつく。

「あいつらもアホだろ」
「…先輩も言葉選ばないと誤解受けますよ」
「うるせえぞおい」

 とりあえず走って逃げた。




 お昼。弁当を忘れたことに気がついた私は職場から自宅が近いのをいいことに弁当を取りに外へと出ていた。途中、待機する大量のマスメディアを避けるために少し回り道をしたりしたが、なんとか弁当は手に入った。ちょうどいいので家でご飯を食べ、洗って個性で乾かしてから職場への道を戻る。
 次の授業は2年生の世界史か、今日はローマの芸術文化についてだな…と展開を考えていた時、異音に気がつく。

ーーこのうるさいサイレン…確かレベル3だっけ?

 自分の職場から鳴り響く警鐘か、と冷静に分析をしていたがその分析したことの意味を考えた時、

「えっうそ待って!!」

あわてて駆け出した。今日の服装はブラウスにフォーマルなジャケット、くるぶし丈のズボン、かかとの低いパンプス。走るにはもってこいの恰好であり、ヒーローとしての基礎である走りの技能を存分に生かして雄英への道を急ぐ。

ーーレベル3は緊急事態…敵や不審者の侵入、その他事件が起きた時の警報だけど、セキリュティ厳重だからそんなこと起きたことないぞ…?!

 しかし、そんなことが起きている割には町は静かで、学校のほうも異変はなさそうに見える。原因の見当がつかないまま走ってたどり着いて、予想外の事態に思わず足を止めて目を細めた。

「……なぜマスコミが敷地内にいるの」

 職員室めがけて群がるマスコミ、それをとどめようとする相澤先輩とマイク先輩。もううこし目を凝らすと、校舎内がパニックに陥っているのがわかる。なぜ、と思考を回し始めた時、その異常を防げない理由に気が付く。足元に転がる大量の破片を見て、しかも均一に砕いたようなそれらを見て、理由のすべてを把握する。

 雄英バリアーレベル1、マスコミを防いでいたはずの壁が崩れている。打撃で均一に崩せるような代物ではない、そう考えると出る答えは個性によって崩されたもの。マスコミはその犯人ではなく雄英のオールマイトを取材することに集中した。

「何だよ役立たずじゃないか…!自己中…!」

 ふつふつと湧き上がる怒りをこらえながら、雄英の敷地に入ると地面に両手を触れさせ、表面のコンクリートをいくらか解体させて先輩方とマスコミの間に壁を作ろうとしたが、案の定気づいていたらしい相澤先輩が私の個性を強制シャットダウンさせた。視線があと少しなんだから我慢しろ馬鹿野郎と罵ってきている気がする。なんで…と思ったが、サイレンの音が近づいてきていることに気づき、警察が来てくれるからか、と私は納得の表情で先輩の指示に従う。
 その後は警察のお仕事がテキパキと行われた。有能な警察は好きだよ。




 警察も撤退した昼下がり。私の受け持つ今日の授業はすべて終え、書類仕事だけを残した私は根津先生に呼び出されて正門前にいた。到着次第渡されたのはこの門を構成している資材の資料と、それらの成分表。

「佐倉くん、どう思う」

 分析を求められている。私は崩れた破片をいくらか拾い、個性で資料の通りに原子まで解体できることを確認する。うむ、異状はないな。つまり、変化させたものではないのだ。

「私のように"分子レベルで分解する"個性じゃない…多分、"崩壊する"個性だと思います。条件が整えばモノが崩れていく…そういうタイプなのではないでしょうか」

 生徒にその条件が整ったら最悪の事態が起こる。それを想像して寒気がした自分がいることは否めない。

「なるほどね…まあただ、確実なのは、これは宣戦布告だということだろう」
「マスコミはその宣戦布告者を見てないんですかね。触れたとしたらみなさん気づく気もします」
「オールマイトにお熱だったからね…ただ、調査してみる甲斐はあるかもしれない」

 根津先生の瞳に強い光が浮かぶ。私は壁を修復しながら、今日の事件で悪意が忍び込んでいないことを願った。

差し向けられた悪意


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