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 唐突だが、私について話したい。

 私の名前は佐倉成実。国立雄英高校の社会科教員で、ヒーロー科の社会科授業と、一年生の相談役が私に与えられた役目だ。
 そして、私のもう1つの顔はエルセロム。プロヒーローだ。メディア嫌いで情報を晒さないため詳細不明とまで言われている。

 プロヒーローである私は一応、雄英高校出身者だ。成績、身体能力、個性の3セットを評価され、晴れて入学を許可された1人。この場所で私は大事な先輩であるイレイザーヘッドとプレゼント・マイク、かけがえのない二人の同い年の女友達、未だに面倒を見てくれる根津校長とリカバリーガールに出会った。
 私は卒業後すぐにヒーローやサイドキックにはならず、大学の教育学科に進んだ。そして大学生の傍ら、時折ヒーロー資格を活用して人助けをしていた。だが、素顔をさらすのも本名を名乗るのも嫌だった私は、雄英時代の先輩、プレゼント・マイクとイレイザー・ヘッドに泣きついたのだ。コードネームが決められない、と。

「コードネームか…」

 私の悩みを聞いたマイク先輩は唸りつつ、私お手製の酢の物を食べている。塩で柔らかくしたキュウリとカブ、水で戻したワカメを、一晩煮干しを漬けて出汁をとったお酢、醤油に和えたもの。お好みですりゴマをかけるもよし。ポイントは煮干しの頭とハラワタをとって、キッチンペーパーの上に乗せたら電子レンジで加熱して炒ることだ。こうすると煮干しの風味がお酢に出やすい。お酢の酸味もまろやかになるのでオススメ。ちなみに私は断然ゴマをかける派。

「どうでもいいだろ、適当につけろよ」

 そう素っ気なく返した相澤先輩は、味噌汁に手を伸ばす。これも私が作った。カツオ、サバなどの節ミックスと昆布から出汁をとって、油揚げ、大根、人参、豆腐と私の好きなものばかり入れてある。というか、今この食卓に並ぶ食事は私が作った食事だ。
 大学二年生、少し学業に余裕が出てきた身なので時間もそれなりにある。なので、ヒーロー目指してサイドキック活動に精を出す先輩方に夕飯を出すことで相談の見返りとしたのだが、返事は期待していたよりひどい…というか、もはや返事してもらっていない。

「てかお前、高校時代につけなかったのか」
「シゲサネで通してました」
「成実の読み方を変えたのか」

 そうです、と私は話しながらどれを食べようか悩み、結局天ぷらに手を伸ばした。これだけは購入品。掃除や作るときの手間を考えると買ったほうがいいと思ってしまった。…お気に入りのかぼちゃ天ぷらとサツマイモの天ぷらは絶対譲らない。自分の皿に天ぷらをとると、指先でチョンと天ぷらに触れ水の分子を抜き取り始める。適度なところで指を鳴らしてから食べるとべちゃべちゃしてなくて美味しい。マイク先輩が俺にも!とセットで付いてきたかき揚げを皿に乗せて押し出してきたので、キッチンペーパー越しに触れて水の分子を抜く。そして正面を向けば想像通り相澤先輩もエビやらなんやらを乗せた皿を出してくるのでこれもキッチンペーパー越しに触れて水分を抜いてやる。

「Thanks!!佐倉ちゃん!」
「悪いな」
「いえいえ」

 先輩方に受けた恩を考えればこれくらい、と内心で付け足しながら、私はかぼちゃ天ぷらにかぶりつく。ああ、至福の時。そうしてしばらく全員が揚げ物を食べる無言の時間が過ぎていく。そしてある時、マイク先輩があ、とこちらを見る。

「分子を操作できるんだろ?分子って物理とか化学のmoleculeだろ?」
「はい」
「じゃあこれだ!」

 マイク先輩は無駄にカッコつけてこちらを見る。箸を振り回すな、箸を。

「今日から君は!エルセロムだ!!!」

 私の脳がその言葉を聞いて静止する。私が固まったのでマイク先輩も固まり続けて私の返事を待つことになり、部屋には相澤先輩の天ぷらを食べる音だけが響く。そして、相澤先輩がエビ天を食べ終わった時、

「エルセロム…!」

 脳内の整理が終わり、私は感動の意を示した。

「ありがとう!プレゼント・マイク流石!!」

 相澤先輩が視界の端で咳き込む。しかし私はそれどころではない。マイク先輩と共にキャッキャと騒ぎに騒ぐ。

「だろ?!!俺のセンス最高だろ!!」
「かっこいいし性別関係ないし最高!!」

 凄くない?!性別はフリーで、分子…moleculeを逆さにしてローマ字読みでelucelom…エルセロム!ひねった感じが好き!!
 明日書類に書いて提出します!とノリノリで先輩と騒いでいた私は、やっぱり先輩たちを頼って正解だった、と内心大喜びであった。

 まあそんなこんなで、私のコードネームはエルセロムになった。



おまけ

「お前正気か?」
「え?正気ですよ」
「なんだよイレイザー!俺にコードネームつけてもらったくせによぉ!文句か?アァ?!」
「それはそれ、これはこれだ」
「まあシゲサネより全然いいと思います」
「シゲサネなら完全に男と間違えてもらえるぞ」
「私は詳細を明かさずヒーロー活動したいです。なのでこれくらいが丁度良い」
「訳わかんねえな………勝手にしろ」

「(結局お前もこいつにコードネーム決めてもらうのかよ…)」

 何でこうなった、とどこか不満な相澤がいたことを彼女は知らないとか。




私の話


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