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 12年前、雲ひとつない晴天の日。今日は年一度、高校生活で三回しかない、プロヒーローへのアピールの場、雄英体育祭当日だ。

「相澤!飲み物買うか?」
「いらねえ」

 隣に座る野郎……マイクがうるさい。そっけない態度で返しているのになんだかんだ俺に絡んでくるのが面倒。それに金髪を上にうねらせた奇妙な髪型をしているので非常に非合理的だと思う。

 今目の前では三年の脱落者向け借り物競争が、スマホの画面の中では一年の騎馬戦が執り行われている。案の定、前の障害物走で一位になった奴は破格のポイントを割り当てられ、周囲からこれでもかと狙われ続けていた。まあそうなるよな。どんな奴かというと、肩につくかつかないかでバッサリ切った髪を後ろで束ねた女子生徒。泣きそうな、困ったような顔でひたすら個性も使わず逃げ回っている。

「個性使わねえな…」

 大柄な男子と取っ組み合いになる。しかし、彼女はさらりと手をかわして逆に手を伸ばし、相手の得点を奪い取る。

「ん?知らねえのか、相澤」

 後ろから水を生み出し操作する個性を発現した奴が波を彼女に浴びせかけようとする。周りを巻き込むその大波は周囲の騎馬を崩し、かなりの威力。
 彼女はそれに気がついたらしい、大柄の男子生徒を押しやり、バランスを崩している彼と彼の騎馬に何かを言い、後ろを向くと手を伸ばして、彼女たちを覆うよう目前まで流れ迫った水に触れる。するとエリア全体を覆っていた大量の水は瞬時に霧散して消え去り、崩れた騎馬とむせる奴ら、波にのまれなかった奴らが残る。彼女は指を鳴らし、皆があっけにとられる。そして制限時間切れとなり、彼女のチームが一位通過したことを司会が知らせた。

 なんだあの個性?!と会場がざわめき、彼女を見ようと視線を送る中、俺は隣のマイクを見る。彼はわかっていたかのような笑みを浮かべるとこう言った。

「1ーBの佐倉成実!今年の推薦入学者で、なんと!個性の正体が全く知れない謎に包まれる少女なんだぜ!!」

 訂正。
 こいつ何にも知らなかった。



 昼休みを挟んで午後。だいぶ食事も消化されてエネルギーになってきた頃、スマホ画面の中では一年のトーナメント戦の説明がなされる。一対一で戦い、戦闘不能にすれば勝利。なんでもありだが、殺しはダメという単純なルール。しかしこの上なく個性のアピールにはもってこいだ。

「なあ相澤!どいつが一位になりそうか賭けねえか?!」
「うるせえ黙ってろ、てかお前もう召集時間だろ行ってこいよ」
「いや時間まだあるからな?!お前と同じタイミングで召集かかってるからな?!」

 まだ隣にいるマイクを無視してトーナメントの中央、佐倉成実の文字を探してーーその文字がないことに気づく。疑念に眼を細めると、ちょうどその思いを汲み取ったかのように司会者がアナウンスを流す。

『次の一年トーナメント戦ですが、障害物走、騎馬戦ともに一位通過の佐倉成実は体調不良のため棄権となりました。そのためーー』

 なんだ、つまらねえ。彼女は棄権したのか。
 ペース配分のミスだろうか、一年に一度のチャンスを棒に振ったのは…そんなことを思いながら、スマホの画面をホームに戻して電源ボタンを押し、ポケットにしまって頭を掻こうとした。そして、事件は起こる。

「何でだよ佐倉!!さっきまでピンピンしてたじゃねえかYO!!」

 突然暴れだした隣人の爪が俺の手をひっかく。乾燥した俺の肌は金髪野郎の爪にあっけなく負け、手に切り傷ができる。

「……………」
「あ…ごめ、相澤。まじごめん。sorry!!!!」
「保健室行ってくる」
「そんなかよ!!えっそんな重傷負わせた記憶ねえよ!!!」

 何を騒いでいるんだか。俺は金髪野郎を無視して立ち上がると、仮設保健室へと向かった。

 ちょうどいい、と思ったのだ。
 興味のある彼女がそこにいるなら、ついでにどんなやつか見てやろう、そう思いながら、合理的理由を見つけた彼は保健室へ向かって歩き始めた。

相澤少年と新入生の体育祭


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