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 目を開く。キョロキョロと目が周囲の情報を集めるうちに意識が覚醒し、集めた情報で自分が病院のベッドの上にいることを知った。
 右手で辺りを探ろうとしたが、その右手ーー右腕は痛みを訴えて動かせない。左手は、左腕は包帯がガチガチに巻いてあって動かせそうにない。

ーーああ、両腕だめにしたか…

 他人事のように呟こうとして声が出ない。そういえば口の中がカラカラだ。
 ナースコールの端末が手元の近くに置いてないか探り、右手付近に見つけたのでそれを何とか掴んで押す。

 しばらくしてドアが開く音、カーテンが引かれる音がして、白衣を着たボブカットヘアの女医が顔を出す。その女医に見覚えがあった上、ここにいることが信じられなくて名前を叫ぼうとして、声が出なくて咳き込む。

「ああもう、落ち着きなよ成実」

 彼女は慣れた手つきで私の背に手を回して起き上がらせ、水を飲ませてくれる。喉の渇きが収まり、落ち着いた私をいつの間にかベッドの姿勢をあげていたらしく背もたれとなったマットレスに寄りかからせる。

「えっあっ、透子ちゃん…?!」
「ああそうとも。透視能力で病気を何でも見つけちゃう見抜透子さまですよ。思ったより元気そうね」

 見抜透子ーーみぬきとうこ。雄英高校普通科出身の医者だ。私と同い年で、私にやたら新薬研究員になることを勧めた過去を持つ。1年生の時に私と私の個性をやたら気に入ってくれた2人のうちの1人で、それ以来仲のいい友人。親友とも呼べるかもしれない。もう1人は私のコスチュームデザインをしてくれたサポート器具製作者、エンジニアで、きっと今頃、誰とも連絡を取らず工房にこもりっきりのはずだ。

「なんでこっちにいるの?就職先は四国だったよね?あ、それより生徒たちは、イレイザーヘッドに13号は?」
「まあ落ち着きなよ」

 彼女は笑みを深めて私の頭を撫でる。成実は小動物みたいなのよねぇ、かわいいわあ。過去にそう言ってはよくやってきたその行為。ひさびさのその感覚に照れくささと安堵を感じながら、彼女の説明を聞く。

「私の勤務先、こっちになったの。しばらく慌ただしいから、落ち着いたら話してあげるわ。では学校の話。ーーみんな無事よ。1人けが人が出たけどリカバリーガールの施術で完治。ちなみに生徒たちは今日は臨時休校よ。教師陣は13号が上腕と背中の裂傷を負っていたけどもうそれなりに良くなった。イレイザーヘッドは顔面の骨折がひどくて、私の手術とリカバリーガールの施術で見た目はだいたい元どおりになったわ。少々の傷と、個性使用における時間の短縮、残るものがその2つで済んで良かったわよ本当」
「………そう、誰も死んでいないのね」
「あんたがカラダ張ったからね」

 良かった、と呟き落ち着くと逆に相手が荒れ始める。
 問題はあんたよ!!成実よ!!と私を指差して病院にもかかわらず荒ぶる。

「肋骨3本の骨折!左腕の骨折寸前のヒビ!右腕は筋肉の損傷!左頬の擦り傷!コスチュームのフォローがなかったら重傷だったわよ多分!!そして39度5分の高熱!あんた個性を使いまくったわね?」
「熱は多分もう下がっ「質問に答えようか佐倉成実?」すみません人に使いまくりました」
「まったく!あれだけやめておけって言ったのに!」
「うっ…何の申しひらきもできません」
「でしょうね!もう!高熱で身体が弱るからリカバリーしてもらうこともできないし!隣で寝てる相澤先輩に礼言っときなさいよ?」

 え、と私が固まると、透子ちゃんがカーテンを引いた。さすればミイラのように包帯を巻きつけた人間らしいものが寝転ぶ姿が見えた。髪型的には相澤先輩のような気がする。

「相澤先輩があんたの氷嚢とっかえてくれてたのよ。起きてる時だけだけど」

 相澤先輩だった!!!うっそぉ!!
 驚き、そして羞恥で悶絶する私をよそに、二人は話し続ける。

「仕方ねえだろ、見抜が替えに来ねえから」
「本当なら個室にしたいし看護師にまかせたいんだけど、リカバリーガールに治療してもらった時にヒーローの格好をしてたからこりゃダメだと思ってね。仕方ないから相澤や13号と一緒に一つの部屋に詰めて、私とリカバリーガールで面倒をみるしかないでしょ」
「ご迷惑をおかけしました………」

 消え入りそうな思いで礼を述べ、布団で顔を隠そうとするが、それは透子によってあっけなく引きはがされる。

「とりあえず成実、これからリカバリーガールに施術してもらうから」
「うっ…」

 いやそうな顔をした私に罰だと思って受けろ、と喝を入れた友人は思い出したかのように言葉を述べた。

「あ、そうそう。コスチュームね、壊れかけてたからあの子に出しといたわ。近いうちに返ってくるんじゃない?」

 そう言ってほほ笑んだ友人とその「あの子」に、私は今だに救われるのだ。

懐かしい友人


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