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 暗闇の中、全身の重さと顔の痛みを感じながら、なんとか目を開ける。すると、包帯と見覚えのない天井、薬品の匂い。

ーー薬品の匂い…病院か…

 目を覚ましたのは相澤。しばらくぼーっとしていると、右からぬっと顔が現れる。

「目が覚めたか!相澤!」
「…マイク………そういやどうなった、生徒は無事か」

 現れた顔の持ち主は、高校以来の友人ーープレゼント・マイク。病院だからか、いつものテンションの高さやウザさはなりを潜めている。でもやはり声はボリュームを下げたつもりでもうるせえ。

「無事だ!心配いらねぇぜ!」
「そうか…」

 包帯だらけかつ凄まじい疲労のたまった身体は座るどころか体を動かすのも精一杯だ。体を横にして顔を足の方に向けてようやく見えた向かいのベッドには、13号が眠っているらしい。

「13号は背中と上腕。ただもう治療済みで、後は寝て休むだけ。お前は崩れた右肘がまだ残ってるのと、目元も明日もう少し治さないと動くのは無理だと」
「そうか」
「目は後遺症が残る。それは覚悟しとけ、と見抜ドクターが言っていた」
「………まあ、生徒の命が無くなるよりは良い。それより、見抜ってあの見抜か」
「そうだぜ!なんでも転勤だってよ」
「だからって戻ってこなくても…」

 高校時代に聞き覚えのある名前に苦い顔をしつつ、ふと隣のベッドも使っていることに気づく。カーテンを遠慮気味に見て、マイクを見れば、彼はしてほしいことを察知したのかカーテンを容赦なく開ける。そして見えたのは、点滴の刺さる細い腕。

「…この馬鹿は、」

 目を見張って見た先にはガーゼを頬につけ、赤い顔で眠る後輩の姿があった。明らかに高熱にうなされている彼女は氷もあまり意味をなしていないようで、溶けきった氷嚢を額に乗せながら苦しそうに息をしている。

「生徒を守るために、1度に15人も水抜いたらしいぜ。そのあとにフルスピードで2回の水分操作。あの短時間に1人で約30人を絶え間なく、個々に技かけたんだと。全く、無茶をする奴だ」
「………」

 マイクはまた溶けたか、と仮付けの冷凍庫から氷を取り出すと、氷を氷嚢袋へ入れて側の水道から水を型に流し入れ、少し残した水と取り出した氷とを混ぜて氷嚢を作る。そして、汗ばんだ額に乗せてやると、後輩の苦しげな表情が少し和らぐ。

「肋骨3本の骨折、左腕の骨折寸前のヒビ、右腕は過負荷をかけたのか筋肉に損傷が見られたそうだ。骨に関しては、コスチュームの衝撃吸収材がなければもっと折れてたかもというのがドクターの見解。あとは左頬の擦り傷、そして39度5分の高熱。これが一番ひどい」
「短時間での過度な個性使用か」

 そうだ、そういったマイクは眉を下げ、相澤を見る。

「今回ばかりは叱ってやるなよ。解決まで最短の酸素抜きを使わずに佐倉ちゃんはお前も含めて広場の人間全員、それに土砂ゾーンの3人や火災ゾーンの尾白を守ったんだ。イレイザーヘッド、お前が言うべきは、礼だ」
「…ッチ、分かったよ」
「じゃあ俺は帰るわ、メシ食いたいし!」

 マイクはカーテンを閉めることなく彼女から離れると、荷物を持ってドア際に立つ。

「明日は臨時休校だからおとなしく寝てろよ!あと、」

 こちらを振り返り、一言。

「佐倉ちゃんに手を出すなよ?相澤」
「出すわけねえだろ山田」

 言葉を遮るように言い、気持ちだけ睨み付ければ、マイクはジョークだよジョーク!!本名やめろって!!と言って部屋を出て行く。なんだかんだいつになく静かなマイクだった。いつもこれくらい静かならいいのに。

「………成実」

 返事はない。

「お前はいつもそうやって無茶をする。そんなんだから、いつまでも俺は世話を焼かなきゃならねえ。本当に非合理的だ。…だが、今回は助かった」

 普段の穏やかな表情からかけ離れ、熱にうなされる後輩は見ていてつらいと、どこかで感じる自分がいる。話しかければ必ず返事を返してくる後輩の返事が聞こえないのを、寂しく思うらしい。ただ、それをすべて話すのは、何か違うだろう。だから。

「礼はする。だからとっとと熱下げて起きろ」

 それだけ言うと、抜けきらない睡魔に誘われるかのように再び眠りの中へと落ちていった。

彼女に直接言えない話


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