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何気なく拾い上げると、ふわりと何かの香りがした。
嗅いだことのある匂い。
……――そう、この匂いは、間違いなくホワイトピーチの香りだ。
哉鬼先輩の顔が脳裏を過った。
「えっ……なんでこの人からあの人の匂いがするんだ……?」
驚いて、もう一度彼に目を遣った。良く見ると、襟足の長さというか、髪形は哉鬼先輩に似ている気がする。
どうやら、顔を確認してみるしかないようだ。ブレザーをベッド脇に置いてから、音を立てないようにベッドに手を付いた。精一杯身を乗り出してみると、黒髪の隙間から赤いピアスが覗いていることが分かった。しかし、顔は良く見えない。
仕方がないので、上履きを脱いでベッドに上がった。これなら確認できそうだと、そーっと顔を覗き込んだ刹那――、彼が目を覚ました。
「えっ……あ……!?」
離れようと、慌てて身を退いた。だが、腕を掴まれてしまった。そのまま、ベッドに押し倒される。
――突然、香りが強くなった。
それもそのはず。いつの間にか、彼の顔は俺の真横にあったのだ。そのまま、首筋を甘噛みされる。恥ずかしさで、体温が急上昇していくのが分かった。