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「わり。前見てなかったわ」
声が聞こえたため、反射的に瞑っていた目を開けると、金髪の男が俺を見下ろしていた。身長は170後半ぐらいだろうか。髪は肩まで伸びていて、毛先がカールしている。制服は着崩しているし、両耳に二つずつピアスがある。喧嘩をしたのだろうか、左頬に貼られている湿布が目立つ。だが、顔は、男の俺から見てもカッコいいと思うほどに整っていた。
「大丈夫か? なんか、ぼーっとしてるみてぇだけど」
その顔が、ずいっと近づいてきた。反射的に体を少し後退させる。
「あ、大丈夫です。すみません、俺の方こそ前見てなくて……」
「てか、お前三年じゃねぇよな? 三年の階で何してんだよ」
彼は、離れた距離を戻すように掴んでいる俺の腕を引っ張った。じわりと、恐怖が広がった。嘘をついたら、バレた時に殺されるような気がする。
「ひ、ひとを捜してて……」
「人捜し? 誰?」
「さ、さいき先輩なんですけど……」
素直に答えると、彼はすぐに腕を離してくれた。
「なんだ、哉鬼か。アイツなら、今保健室に行ってると思うけど。確認してみるか?」
彼は、一瞬面倒臭そうな顔をしたが、ズボンのポケットから赤いスマートフォンを取り出した。どうやら哉鬼先輩と連絡を取ってくれるようだ。