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 「次は、渋谷。渋谷。お出口は、左側です」

 満員電車で揉まれること数十分。

 やっと、渋谷駅に到着した。

 冬の空気で冷えたホームに、溢れんばかりの乗客が吐き出されていく。

 僕もそのうちの一人で、人の波に押し出されるようにして電車を降りた。

 「落ち着いて移動して下さいー!」

 数名の駅員が、大きな声で何度も繰り返している。

 しかし、乗客はみんな我先にと改札口を目指して足早に歩く。

 その波に乗らなければ押し倒される可能性もあったため、僕も流れに乗って改札を出た。

 「てかさ、みんなもっと早く帰れって感じだよな」

 「わかるー。」

 ふいに、隣を歩いていた男二人組の会話が耳に入ってきた。

 ちらりと二人の方を見遣ってみたが、夜ということもあって、僕の視線に気付く様子はない。

 「つぅかさ、さっき電車で横にいた奴、大音量で音楽聴いててまじイラついたわ」

 「うっわ、まじかよ。俺だったら、そいつのこと殴ってたかもしれねぇ」

 「だよな。耐えた俺はまじ偉い」

 そんなやりとりをした後、二人は声を上げて笑った。




 

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