Aster そんな日 | ナノ

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「年末だねえ」

俺の半纏着て寝っ転がっている臨也が言った。「まあな」「うーん…」寒いと言って強引に設置されたエアコンと加湿器(どうしても普段余り使う必要性を感じないかもしくはできるだけ使わない様にしてしまうので、いまだ礼を言うべきか図りあぐねている。)が、眠たい空気を醸し出していた。31日の今日大晦日に、無事二人で居れた事が嬉しい。別に死線を潜り抜けたとかそういう訳ではない。単にそれまで喧嘩していたからだ、一度発散したらはいすぐ元通りみたいな方じゃなくて地味に数日続く方を。数日続くと言っても大概その間仲直りするタイミングを図りかねている期間の方が長いのだが。臨也は臨也で拗ねているのかそれとも謝るのに一歩踏み出せないでいるのかよくわからない感じで、俺は俺で割とすぐ普通に謝る体勢は万全だったりするので臨也の機嫌を伺いつつ結局大体俺から先に謝る。別に不満はない、何故ならそういう時、つまり俺が先に折れた事によってようやくおずおずと言った感じで折れてきた時の臨也ときたらそれはもう、可愛いからだ。密かに心の中で大事にしている光景である。

ただ昨日は例外で、珍しく臨也から折れてきた。先を越された感じだ。それはこのままじゃ年末が過ぎてしまうと臨也が焦ったからじゃないのかな、とか、考えたりすると嬉しい。そうだな俺もお前と一緒に過ごしたいと思ってたよ。とか言って特にそういう訳じゃなかったらどうしよう。どうもしないが。まあ、でもやっぱりお前と一緒に年末過ごせて嬉しい。


ごろんと横向きからうつ伏せに寝がえりを打った臨也に手を伸ばして持ち上げて、なんとなく膝の上に乗っけた。ちょうど抱き合っている様な形だ。臨也の、末端は冷たくて体幹は一応暖房と服であったまってる体はその間だらんとしてされるがままだった。伸びきってる犬か猫かの様だ。抱き合った体は暖かく、冬はやっぱりこれに限ると思っているし、毎年冬が近付いてくると今年もあれで暖まろうと思っている。そのまま絨毯に寝っ転がって臨也の耳元に年明けどっか行くのかと言うと、くすぐったそうにしながらえー別にどこも、食べ物買いに行くくらい?と返って来た。「だよなあ…まあ家でいいか別に…」「気が向いたらでいいじゃん」「だな」


現在時刻は23時も半を過ぎた所で、もう年越し蕎麦は食べたし、風呂にも入った。最近臨也が買ってきた日本酒が入っているらしい乳白色した入浴剤を入れた風呂に一緒に入って、気持ちが良かった。
幽の出ている年末番組をテレビで流しつつ、気は臨也の方に向いていて、臨也の腰を片手で撫でつつ頭と首筋に手を滑らせていれば、ほぅ、と臨也から息が漏れる。白い耳を愛撫すれば押し付ける様に手に頭が擦り寄った。そうだな、新年部屋にこもりっきりもどうかと思うから、もう食べ物は用意してあるけど年が明けたらその内コンビニにでも行こう、それで何か買ってその辺の公園で食おう。

もうすぐ年明け、来年も、手に触れるこの肌に触れていたい、来年も口から漏れるこの息を感じていたいし来年も触り心地のいいこの髪に頭に触れていたい。飽きる事なく永遠に抱き締めて眠っていたい。でもそれでは勿体無いから、やっぱり今までと同じ様に色々、これからも、一緒に。

0時を回ったら、2人だけのこの場所で、2人のためだけに、2人のための言葉を交わすのだ。



新年おめでとう。ーーー今年も、よろしくお願いします。




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