「あっちゃ〜また俺の負けっス」

「弱いですね部下Aさん」

「名前さんと篁さんが強いんすよ!?」

「トランプ飽きたんで次は人生ゲームとかやりたいです」

「切り替え早っ!!」

「俺はなんでもいいよぉ〜」

和やかにトランプで遊ぶ大人5人がそこにはいた。
これは苗字名前が篁 聖人の元に連れてこられた次の日のことである。何故このようなことになっているかというとその日の朝まで遡らねばならない。


「さぁ名前ちゃん、君は今日から俺の彼女な訳だけど、しばらく学校行かないでね。あと外にも出ちゃダメ。ここで暮らしてね、わかった?」

「…何故ですか?」

「まぁ単純に言うと折原の所に行かれるのが嫌なんだよ。それだけじゃダメかな?」

「でも私、着替えとかないです」

「そんなのここにあるに決まってるじゃないか〜!」

「…何故そんなものを貴方が持っているかという事は聞かないことにします」

「うん!これで何も問題ないデショ?」

「はい、特には…って私はどこで寝ればいいんですか?」

「それはこっちに部屋があって、あ、ここ君の部屋ね。あと風呂はあそこから出て…」

と、このようにあれよあれよと篁のところに住むことが決定し、部屋を案内してもらい午前中が終わった。連れてこられた篁の家…というかいる場所は庭園のついた日本家屋でまぁ極道のお家、というものを想像してもらえればいい。

最後に案内された大広間なんて一番端の上手だと思われるところが一段高くなっていてしかも和室なので将軍かよ、と思わず心の中で突っ込んだ。

「ところで、俺の部下を紹介しようと思います!」

「え、結構です。関わる気ないので」

「そんなこと言わないで!ほら、お前ら!入ってこい」

そう声をかけるとゾロゾロと入ってくるのは黒いスーツを着た強面で大柄の男の人がざっと40人ほど。多いな。

「はい自己紹介!左から!」

「え、この数一気に覚えられないですよ?!」

まぁまぁ、と窘められてとりあえず全員の名前を聞いたあと、全員でお昼を食べて用がある人が抜け出ていった結果名前と篁を合わせて5人が残ったのでトランプでもするか、といって冒頭の会話に戻るわけだ。

人生ゲームあるかな、と部下Aさんが探しに出たのとほぼ同時に篁さんに電話が来て出て行ってしまった。そこで残された私と部下BさんとCさんでたわいもない話をする。

「いや〜名前さんが来てくれて良かったっす!ウチ男所帯だから華がねぇんスよ!本当に」

「マジで俺もそう思うっす!篁さんがイライラしてると思ったらご機嫌になるし、その上こんなに可愛い彼女さんまで作ってくるなんて…。篁さんとは長い間一緒にいるんすけど彼女を家に連れてくるの初めてっすよ!」

「彼女を連れてきたというか、連れてこられたら彼女にされたんですけどね」

「それにしても篁さんも見る目が高いっすね」

「ありがとうございます。でも話聞いてます?」

「そういえば、名前さん大学生って事は成人されてるンスか?」

「してないですよ、19なんです」

「ばっかお前!篁さんに怒られんぞ!女性の年齢は聞くな!失礼だ!」

「ねえ、答えてるじゃないですか!」

「はっ!そうでした!スンマセン!!名前さん!!!」

「…もういいです」

なんだこいつら疲れる。


「(臨也さんは今頃どうしてるかな…?)」

そこでハっとする。珈琲の時間…過ぎてる…。

「(もう臨也さんのところには戻れないのに…何考えてるんだろう…)」

あんな別れ方をして、きっと臨也さんは気にしてなんかいないであろうが普通の人間はあのような別れ方をしたら会いずらいものだろう。
散々言われてきた言葉だが本当に勝手に行かなくなっても良かったのだろうか。散々、迷惑をかけておいて去るときは何も言わないなんて非常識が過ぎるような気もする。

…もういい。臨也さんのことを考えるのをやめよう。















それから一ヶ月くらい。

名前はテレビを見たり、部下さん達と遊んだり、テレビゲームをしたり、外には出れなかったしインターネットもできないけど楽しく過ごしていた。


時々折原臨也のことを考えては沈むけれど、臨也が自分のことを疎ましく思っていたのを知っているからこの場から抜け出して折原臨也自信を危険に晒すなんてしても誰も得しない挙句に彼が傷つくだけだろう。そんなの嫌だ。

彼が私に何かを期待してるなんて思ってないし、もしもこれを知ったら余計な事をしてくれたな、とでも言われるかもしれない。

でも、それでも私は臨也さんに何かあったらこれからの長い人生を送っていける自信がない。それほどに彼を愛してしまったのだから。彼が無事でいられるなら私の長い人生のウチのたったの5、60年この男の近くにいてやってもいい。…それで臨也さんが喜ぶのなら。

<本当に?>

頭の中で誰かが囁いた気がした。



「名前ちゃん、今日は外、いいよ。さぁ初めてのデートしよう。」

優しげに名前を見つめ、篁は囁く。

「久しぶりだろう?じゃあまずは池袋へいこうか。」


そうして2人は池袋へ繰り出した。



同じ頃、新宿でも1人の情報屋が池袋へ向けて家を出た。


2人の人間と1人の人外の運命は交わるのか。



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