臨也さんのマンションを出てからすこしして、池袋の例の店で無事に買い終えたわけだが、波江さんの買い物には生鮮食品が含まれているので出際の臨也さんの言った通りにしばらく帰れないとするとか買い物は最後に回したほうが良い筈で、そうすると少し暇な時間ができてしまった。

サンシャインの横の猫が沢山いる公園が近かったので少し癒されてこよう。と公園へ足を向ける。

可愛い。見てるだけで可愛い。
ふとカップルやら、友達同士やらのグループが多いことに気づく。確かにまだ日の暮れていないこの時間は高校生などが遊び歩くにはもってこいの時間だろう。


今日も今日とて学校が終わってすぐに臨也のマンションに行った名前は大学でも友達が少ないほうである。大学にもなるとそれまでの学校生活よりも"クラス"という単位に意味はあまりない。
同じ教授の講義を受けているだけ…という何とも希薄な関係で、その中でも友達を作ろうと奮闘したものだけが上辺の関係だけでも友好的に付き合っているのが大学でいう友達。中にはきっと本当に仲良くなれる人々もいるのだろうがそんな努力をしなかったので周りに人は少ない。
話しかけられたら当たり障りなく返す。他人などに興味はない、だが自分の"性質"上、必死に何かに勝ちたいとか祈られると勝手に力が発動するので、名前の入った大学は今年、陸上のなんかで圏外からの一位をとったらしい。一概に私が何かしてしまったとは言えないが、可能性はある。

とまあ、大学に関してはどうでも良くて、何が伝えたいかというと街を行く人々が彼氏だったり、彼女だったりあるいは友達を連れて楽しそうに歩いているのを見て感慨深く思ってしまっただけだ。

少し羨ましい。友達が、じゃなくて恋人が、だ。

きっと私は臨也さんと一緒には居られない。
遅かれ早かれ捨てられる。

仮に捨てられなかったとしても、私から離れる事になるのは確実だ。私の身体的な成長は二十代前半で止まるのだから、疑問を持たれて深く詮索されて私が人でないと知られることの方が
私は嫌だ。

捨てられても人であれば愛され続けることができる…。その希望だけで私は今生きていられる。

ヒヒーンと馬の嘶きのような音がした気がした。
不意に顔を上げると目の前にセルティ…私の友達がいた。


【名前じゃないか!どうしたんだこんな時間にこんなところで】

「セルティ!久しぶり…!私は、ちょっと買い物で」

【シューターが突然こっちに行こうとするから何かと思ったら名前だったんだね】

「シューターさんが…シューターさんも久しぶりですね」

バイクに優しく触るとブルルルッと鳴いた。

【名前時間はあるか?私は仕事がちょうど終わったから暇なのだが、少し話さないか?】

「私も時間が余ってたところなの!もちろん話そう!」

首無しライダーが公園に入ってきた時点で他にいた人などとうに去った。公園には2人と猫だけである。

【名前にはPDAが不要だから助かるよ。あれは打つことには簡単だが会話にタイムラグが少しあるのが面倒だからな】

「そうだね、私もセルティの声が聞くことが出来て嬉しいよ」

そう、何故か名前にはセルティの体が発する声が聞こえる。
大方、人でないことと関係しているのは2人とも承知済みである。

「そういえば岸谷先生はお元気?」

【新羅なら問題ない。ピンピンしているよ】

「そう、良かった。あ、そうだこれあげるね。セルティと先生に。リラックス効果のあるお茶らしいよ。珈琲買うついでに買っちゃった」

【ありがたいが、いいのか?自分の為に買ったのだろう?】

「うん、でもねセルティにあげようと思って実はもういっこ買っておいたの」

【そうか、ありがとう。嬉しいよ、今度何かお礼をさせてくれ】

「え、いいのに。セルティが喜んでくれればそれで嬉しいよ」

こうやって私が一番人間らしく自然で居られるのはセルティの前だけだ。

セルティは素晴らしい女性だ。器量も良く、正義感に溢れなにより優しい。

【名前は最近どうだ?臨也の奴とは上手くいってるのか?】

「ええ、臨也さんは優しいから。…私は波江さんみたいに仕事が良くできる方ではないし、料理も波江さんよりも下手くそだし、重要な事とか教えてもらえるほど使える奴でもないのに…本当に、なんでか分かんないけど臨也さんは私を置いてくれてるよ」

【辛くはない?】

「…まさか!…そばにいれるだけで嬉しいよ、例え1番でなくてもいいから。でも最近怖いの」

【臨也がか?!何かされたのか?!】

「ううん、そうじゃなくて、もし…もしもね、臨也さんに気づかれてしまったら、私が人間でないと彼が知ってしまったら、と思うと…。私はきっと彼の元を離れなくてはいけない。それが怖いの」

【名前…臨也なら例え名前が人間でないと知っても変わらずに接してくるよ。それより、今よりも気にかけてくるんじゃないか?】

「…それは私が女神の血を引いていて、身体の中に剣を宿している珍しい生物として観察されるだけだよ。セルティの首をジロジロ見てたみたいに」

【(あいつはそんなことしていたのか)】

「それにね、臨也さんは無神論者だから。例えば神様の血を引いているなんて言ったら岸谷先生にでも頼んで解剖されちゃうかも」

剣はどこにあるのかなーなんて言いそうだよね。と、暗い話になりそうだったから無理矢理笑って見せた。
そんな痛々しい笑顔の名前に首の無い彼女はかける言葉も見つからなかったが、なんとかこの少女を元気づけられないかと声を出す。

【…新羅はきっと解剖するな】

「えへへ、流石に私は傷の治りがセルティほど早く無いから変なことされたら死んじゃうもんね」

【なに、私が名前を守るよ】

「ありがとう…セルティったらかっこいいなぁ」

それから小一時間ほど喋り、2人は別れた。
予定通り買い物をして臨也のマンションへたどり着いた名前が双子の質問攻めにあうまであと少し。


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