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何がいけなかったんだろう。どうすればよかったんだろう。君が好き、だけじゃいけなかったんだろうか。

なんで。どうして。

貴方の隣にいるその人は誰?



「…ははは」



口角を上げて声を出してはみるものの笑顔なんてものになれそうにない。
今いるのは昔、影の薄いクラスメイト兼幼馴染みのテツヤくんとよく来たマジバだ。今だってよく来るけど大抵一人か女友達とだし。今日だってそう、学校終わってから近くにある本屋に寄ってすぐに読みたくて学校と家の間にあるここに寄った。4時を回った店内には帝光中からも近いからか昔自分も着た制服を着ている子達がちらほら見える。
窓際一番角のシート席に一人で座る私の手には新作のミステリー小説。目の前にはソフトドリンクなどではなくカッコよくコーヒー。これだけ聞くと充実しているみたいだけど私の気分は最悪。理由は簡単、それは東京にいるはずのない彼氏が知らない美人と腕を組んで歩いているのを見かけたから。


これはもしかしなくても浮気…なのか?


だって彼は京都にいるはずだ。平日のこんな時間に東京にいるなんてことありえないんだ。



「…いや、彼の家は大きいし親戚かもしれないじゃないか」


そう、あれが彼だと断定できたわけじゃない。
勝手に勘違いするな。あれは彼じゃ、ない。






ーーーーーーーー





そんなことがあった日の夜のこと。やっぱり気になるので彼に直接電話することにした。


「(…大丈夫。きっと京都にいて、さっきのは私の見間違いだ。)」


よく似た人は世界に3人いるっていうじゃないか。コール音が鳴り出してから数秒後、すぐに出たことに少し安堵する。



「はい、もしもし」

「あ、赤司くん?久しぶり」

「あぁなまえか。久しぶりだね、何か用かい?」

「いや、ほら、もうすぐ春休みじゃない、帰省の予定とかないのかなー?って思って…私達全然会ってないからさ」



電話したはいいものの何をどう話すとか全然考えてなかったせいで最初どもってしまった。おかしいな、いつもどんな風に会話してたっけ?



「あぁそれなんだが、部活が忙しくてね。東京には戻る予定はないよ」

「…そう、なんだ。わかった!夜遅くにごめんね。また昼の時間に電話するね。部活頑張って」

「あぁ、ありがとう」



あぁどうしよう赤司くんが東京に来ないとわかったショックで動揺して切ってしまったから結局肝心の聞きたいことが聞けなかった。赤司くんと最後にあったのはWCで洛山高校が東京に来た時以来だし、その時だって何か言葉を交わしたわけではない。誠凛側のギャラリーから彼の姿を観れただけ。そんな時間なかったのは分かってる。試合中はもちろん試合後は選手たちはすぐにバスでホテルへ行ってしまったし、ホテルに泊まったのは一泊でその次の日の朝一番に京都に帰ってしまったのだから。会って話せる距離にいたのに会話する事すら許されないことにとても寂しかったのを覚えている。

「あれ、私が赤司くんと最後に顔合わせて話したのって高校入る前の春休み…?いや、春休みは赤司くんもう京都に行っていたから…帝光中の卒業式だ。」


もうすぐ一年経っちゃうじゃん。


「赤司くんのばか…」


わかってはいるのに、赤司くんが忙しいってことも頼られやすくて責任感あって統率力もあるしなんでも器用にこなしちゃう完璧な人なんだってことも全部。だから私という恋人とたかが1年くらい合わなくたって赤司くんはどうってことないことくらい予想できるじゃない。何、一人で傷ついてるんだろう。

私は赤司くんと会えないと寂しくて、辛くて、進学先だって京都に行くって聞いたのは卒業式を1週間後に控え頃だった。キセキの世代の進学先は本人たちにも守秘義務があったのか知らないが卒業式近くまで内密になっていたのは周知の事実だ。それは恋人だろうが対象内だったのだろうか…いや、着いてきて欲しかったらきっと教えてた。
それはきっと赤司くんにとって私はそうでなかったということだろう。別の学校になっても東京なら例え学校が違くても会えるかなって思ってたから私は赤司くんが京都に行くと聞いた時、違う高校だとかいうよりも高校生が気軽に会いに行ける距離に赤司くんがいないことが何よりも悲しかった。それでも長期休暇に彼に会えることを期待してそれでもいいかなって…。


「私は赤司くんに会いたいのに…、赤司くんは私のことなんてどうでもいいんだね」


知ってたよ最初から、貴方が私を必要としてなかったことくらい。
でもそれでも貴方が好きだったのです。


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