■ 本恋5



なまえと小林のデートの数日後、都内のマジバでそれは行われていた。長身の男は辺りを気にしながら目深にかぶった帽子を店内にも関わらず外さず、男の話を聞いている同じテーブルに座る桃色の髪の女性はサングラス越しにもわかるその整った顔を少し歪めた。


「つまり…きーちゃんがランドでの仕事をしているときになまえちゃんと誠凛の男の子がデートしているのを見かけた。と」

「そうっス、相手の男は完全になまえっちにラブッスね。なまえっちの方は気はなさそうだったけど…。桃っちから聞いた話からすると今なまえっちは赤司っちにフラれたというか勘違いで絶賛傷心中。そんなときに男に優しくされたら…!あああ俺達のなまえっちが取られるっ!」

「落ち着くのよきーちゃん!私の情報網によると相手の子は誠凛高校2年3組の小林飛翔(こばやし かける)君、サッカー部所属で成績、性格は共に良し、まぁ顔は…普通ね。赤司君やきーちゃんの方がかっこいいよ!でもその爽やかな性格から巷では、というか誠凛女子からはリアル風早くんとも言われているらしいわ。」

「それは…なおさらやばいッスよ。風早くんは漫画ではハッピーエンドだった!」

「…この間なまえちゃんに告白してどうやらなまえちゃんには断られたみたいなの。でも食い下がってデートを取り付けたみたい。私もどこへ行くかまでは分からなくて…」

「俺がランドでバッタリあっちゃったワケっすか」



ずずっと音を鳴らしながらジュースを飲みほす金髪男に深刻な顔のままの少女。



「…お前らさぁ、暇なの」

「いや火神っち!そこは空気読んでほしかったッス!」

「僕は毎回思いますが火神くんはいくつ食べたら気が済むんですか」

「テツくんの方はバニラシェイクだけで足りる?私のポテト食べてもいいんだよ?!」

「すみません、結構です」

「ちょっ無視スか?!火神っちは気にならないかも知れないッスけどこれは由々しき事態なんスよ!」

「そうだよかがみん!もし赤司くんとなまえちゃんがこのままなんてことになったら、きっと…赤司くんの方にも影響が出ると思う…。赤司くんなまえちゃんのこと大大大好きだから本当に別れてしまうようなことになったら…インターハイで当たっても屍のような彼と試合するのやでしょ?」

「それは嫌だな…」

「でしょっ?それに俺たちとしても赤司っちとなまえっちには幸せになって欲しいんスよ…ある意味なまえっちから昔の赤司っちを奪ったのは俺らみたいなもんだし」

「きーちゃん…」


帽子やサングラスを外し、四人でテーブルを囲みながらじゃあ今後の作戦を考えようと桃井が声を出す。


「んなの赤司に直接説明させればいーじゃねーか。ほらこないだの休みん時お前らの学校にも来たんだろ?」

「私達が言っちゃったらサプライズにならないじゃん!なまえちゃんを驚かせる為に赤司君がして来たことが無駄になっちゃう!」

「でもそのsurpriseがみょうじを不安にさせてたら意味ねぇだろ」

「…全く火神くんは頼りになりませんね。つまりはなまえにサプライズのことはバレずに2人はまだ付き合っていると思い直させればいいわけですが、幼馴染としての経験からなまえの頑固さは世界一といえます。赤司くんと付き合っていないと思い込んでいる今の状態のなまえを説得するのは難しいですよ。」

「だよね…これじゃあどっちにしろ赤司君に会わせる顔がないよ〜」

「しかもなまえっちが今付き合っているつもりない事赤司っちたぶん知らないっスよね」

「確か決行の日はGWの最終日でしたよね。そしてそれは明々後日じゃないでしょうか」

「赤司のやつ2日前には東京に戻るっつってたか」

「…それってヤバいんじゃ」

「「「……………」」」


3日後に迫った彼女の誕生日に




「どうしよおおおお!!桃っちぃいいいい!!」

「うわぁぁあん!きいいいちゃぁぁあん!!」

「お前らうるせぇーよ!!」

「でも本当に困りました…。赤司君が明日東京に来るまでになまえに勘違いだという事を伝えておかなければ意味ないですよ」

「ていうかみょうじにはアポ取ってあんのか?予定入ってました、じゃそれこそアホらしいだろ」

火神の一言でピキリと固まる3人。

「も、桃っちなら取ってあるっスよね…?」

「私は何も…て!テツ君は?!」

「僕もなにも言ってないです」


………………。


「テ。テテッ、テツ君は急いでなまえちゃんに連絡して!きーちゃんとかがみんと私は今後どうするか話し合って「あっれー?黄瀬クンと火神と黒子ー?と桐皇の桃井さん!!!」」

明るい声に火神が振り返るとそこにいたのは

「てめーは高尾!」

「やっほー!なになに?なんで集まってんの?すっげぇ面白いことの予感しかしねぇんだけどwwwあっ待って待って真ちゃんもいるから!しーんちゃーん!こっちこっちー」

レジでドリンクを受け取っていた緑間を大きな声で呼ぶ。

「高尾、店の中で大きな声で呼ぶなと言っているだろう「緑間っち!」……?!」

「お久しぶりッス!さぁさぁ座って!緑間っちの頭脳を貸して欲しいッス!!」

「…なぜお前たちがここにいる」

不機嫌さを隠さなぬまま低い声で尋ねるくせに大人しく黄瀬の指示した椅子に座る緑間をみて高尾はニヤニヤしながら素直じゃ無いなぁと溢す。

「お久しぶりです、緑間くん。実は…」



黒子から事の顛末を聞いた緑間ははぁっとため息をついた後にジト目で呟く。


「それで、これからどうするのだよ」


その言葉に反応したのは高尾が一番早かった。


「おおっと真ちゃんなになに?何時もなら『ふん、くだらないのだよ(キリッ』とか言いそうな話なのに!!えっと…そのなまえチャンだっけ?と赤司のことそんなに気になんのー?」


「赤司くんとなまえのお付き合いはいろいろあったんですが、赤司くんは緑間くんに、なまえは僕に相談してきていたので放って置けないんだと思いますよ」


「えっあの赤司が相談、だと…!?」


「高尾、静かにするのだよ。赤司だって人間だ、相談くらいするだろう」


まぁ一番初めにされた時は驚いたが、と続ける緑間。


「あ、なまえの予定は取れました。」

「テツくんナイス!じゃあみんな!これからどうしよう!」

「それならさー、俺にいい案があるんだケド。例えばさ……………で……じゃん?そしたら すりゃ……ってのはどうよ?」



「「「「「それだ!!!!」」」」」








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