■ 本恋3


四月に入った。春休みも残り一週間。最近の私は優秀なことに勉強しかしていない。というかそれしかする事がない。友達とも遊ばなければ1人で出かける趣味もないし、本とかは読むけどそれは最初の3日で飽きた。暇である。さつきとか空いてる日無いかなぁ。運動部って大型連休忙しいみたいだしなぁ、誘ってみようかと思案しながらスマホを手にするとなんとさつきからのメッセージが来ていた。明後日の土曜日に会えないかという内容で、暇な私は勿論了承の旨を伝えた。その日の夜に土曜日はショッピングということに決まり女の子同士の買い物なんて久しぶり過ぎて浮かれていつもより勉強した。何かにこのテンションをぶつけたくて、でも、なにもなくて勉強するしかなかったんだ、仕方ない。



















やってきた土曜日。午前は雑貨屋さんや本屋で小物や本を買い、今はお昼ご飯なうです。私達は大きなショッピングモールに入ってるカフェでそれぞれの昼食を終えてちょうどデザートのパフェを貪っているところだ。


「おいしーね!なまえちゃん!桜パフェ!」
「うん、本当!見た目も綺麗だしね」
「午後はどうする?私、あの服屋さんに行きたいんだけど…」
「じゃあ、服屋さんは決定ね…その後ショッピングモールから離れてさ、公園行かない?」
「うん!いいね!あ、この近くの公園ってあのストバスのコートがある所?」
「うん、そこ行くつもりだけど」
「あー…もしかしたら、、ううん!もしかしなくても大ちゃん今日絶対居るよ」
「え、あぁ今日は部活休みなんだもんね。部活休みなのに一人でバスケって青峰くん…友達居ないんじゃ」
「いるわっ!ボケ!」
「「青峰くん!?/大ちゃん!?」」


突如響いた低い声。なんと今話題になってた青峰くんが現れた!


「え、どうしてここに?」
「あー、いやストバスしてて腹減ったから飯食おうと思ったらよ、さつきが確か今日はなまえとここくるって言ってたの思い出してな、そう言えばさつきが桜パフェが食いたいとかこないだの部活終わった後言ってたからここにいるかと思ってきたら本当にいたんだよお前らが。」
「わーすごい。名探偵ダイキくんだね〜」
「てめぇなまえ…バカにしてんだろ!」
「してませ〜ん」
「ふふふっ」
「ほらダイキくんがバカだからさつきに笑われてやんの」
「お前がアホ面だからだろっ!てかバカっつったか?あ?あ?」
「いやーこわ〜い☆ねっさつき」
「そうだねー」


ほら見たことか、と青峰をみるなまえに桃井は再び頬を緩ませる。


「でも良かった。なまえちゃんが元気になって。最後に会った時元気なかったから…」


さつきたちと最後に会った時っていったらあの時だ。赤司くんとの関係が恋人で無かったと認識して落ち込んでたし、確かに元気は無かったなぁ。まさか今日はそれで…?


「…ありがとう、さつき」


少し涙声になってしまった。青峰くんもニヤッと笑っていていい友達を持ったものだとしみじみ思う。


「そう言えばさっきね!きーちゃんが表紙に出てる雑誌見つけたから買っちゃった!」
「お前、黄瀬なんかの雑誌に金出して買ったのかよマイちゃん買えよ」
「いーじゃない!きーちゃんと最近会ってないしきーちゃん以外にも普通に洋服とか載ってるし!」
「黄瀬くんも買ってくれたこと喜ぶんじゃない?」
「そうだよね!やっぱりなまえちゃんはわかってくれる!それに比べて大ちゃん…ったら………っ!!」


さつきが喋っている声がどんどん小さくなったと思ったら大きな目がさらに大きく開かれた。青峰くんもその方向を見て固まっている。


「さつき?窓の外になんかあった?」

私の向かいに居る二人が目を見開いたままなので尋ねてみると

「っ!ななな、なんでもないよ!!友達がいたの!」
「ふぅん?まぁいいや。雑誌、良かったら黄瀬くんに言ってあげなよ。多分尻尾振って喜ぶから」
「う、うん!そうする!そろそろ出ようかっ!」
「お、おぅ。そーだな!公園行くんだろ!?バスケ!バスケしようぜなまえ!」
「え、その前に服屋さんに行かないと…」
「そんなの先に公園行ってからもう一回戻って来れば良いじゃねーか。」
「何その二度手間。意味わかんないよ?どうしたの青峰くんいつもの5倍くらいバカだけど。」
「いやいや!大ちゃんの言うとうりにしよう!?私も公園すっごい行きたい!」
「え?まぁさつきが言うならそうしようか。」



そういうと二人とも目に見えてホッとした様子を見せた。



「…何か隠してるのは解るけど二人とも誤魔化すの下手クソすぎだよ。」
「な、何も隠してないからっ!ね、大ちゃん!?」
「あ、あぁ!!」
「…はあ、いこうか」



取り敢えず店を出て出入り口付近へ向かうそこで見たのは


「赤司…くん?」

彼は笑っていた。それはもう爽やかに。3月に見たあの女の子を連れてショッピングモールに入ってきたばかりの赤司くんがいた。私達には気づいてないみたいで、そのまま行ってしまった。視界の端でさつきと青峰くんがあわあわと忙しなく動いている。

あぁ二人はこれを隠そうと必死だったんだね。私は、私が彼女じゃないのはもう認めてる、でもそれでも友達ですら、ないのかな?
どうして、どうして?東京には帰らないって言ってたのに…部活が忙しいからっていうのは?あぁ、もう、


「痛い、なぁ」


あれ、自分が今どんな表情しているのかわからないや。

ただ握りしめた手に刺さる自分の爪がこれが現実だと告げていた。




結局、公園に向かう途中で涙が抑えきれなくてさつきと青峰くんに断りをいれて家に逃げ帰った。



「赤司くん…何考えてるのかな。なまえちゃんのこと絶対好きなはずなのに」
「さぁな…ただ俺らに口止めするっつーことはなまえには知られたくねぇってことだろ?」
「…やっぱりなまえちゃんに言ってあげようよ!そうすれば…!」
「そうして解決するとは思えねーけどな」
「でも、私…あんなに悲しそうにしてるなまえちゃん初めて見たよ…今のなまえちゃんは見ていられないよ」



なまえの帰っていった方向を見ながらそんな会話がなされていたことなんて二人以外知らない。






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