静雄さんと付き合い始めて分かったんだけど、
彼は俺の事どうにもベタ惚れ過ぎだと思う。
俺が言う理不尽なワガママにも出来うる限りなんでも応えてくれるし、
時々その範疇を越えた事でも、
彼は無理をして俺の望みを叶えようとしてくれる。
俺が『会いたい』と電話で泣きつけば、
どんな時間だろうが息を切らして飛んでくる。
(それがしょうもないゲームの相手だとしても、だ。)
ベッドに腰掛け、
ぼんやりと目の前に座る静雄さんの後頭部を見つめる。
静雄さんは『あー』とか『クソッ』とか呻きながら、
テレビの中のゾンビ達と必死に戦っている。
余りにも乱暴にコントローラーのボタンを押すから、
壊されやしないかと冷や冷やした。
壁に掛けられたデジタル表示の時計を見る。
彼が来たのは0時前だから、
かれこれ2時間は格闘している事になる。
クラスメイトから借りた某ゾンビゲームが、
どうしてもクリア出来ない。
そんな理由で仕事終わりの静雄さんを呼び出した。
自分のプレイデータからやらせても良かったが、
どうせなら静雄さんのプレイを最初から見たいと思い、
ニューゲームでスタートさせた。
それが間違いだった。
結局彼は2時間かけても全く先に進めず、
最初の洋館にすら辿り着けず、
ずっと同じ所をぐるぐる回ってるだけだった。
俺が横からちょいちょいアドバイスを言っても、
どうにもそれを上手く活用出来ず、
結果ゾンビに噛み殺されてジ・エンド。
今もさっさと逃げりゃあいいのに、
ゾンビの群れに正面切って突っ込んでってしまった静雄さんは、
サバイバルナイフ一本でランボーよろしく戦っている。
けどリアルでは最強でもテレビの中では最弱の静雄さんは、
あっという間にゾンビに囲まれてしまった。
静雄さんの下手なプレイを見て最初はめちゃめちゃ笑えたけど、
さすがに2時間もだと飽きてしまう。
グリーンハーブも底をつき、
こりゃダメだと思った俺はベッドから立ち上がって本体のリセットボタンを押した。
急に暗くなる画面を見て、『あ、』と静雄さんが間抜けな声を上げる。



「もういいです静雄さん。
風呂入って寝ましょう」
「…すまねぇ、紀田。
これがリアルだったら俺、
死んでもお前の事守ってやれたのに」
「ヤですよ現実がこんなゾンビまみれだったら。
ていうか死んでもって、
死んだら静雄さんゾンビになっちゃうじゃないですか」



そんなの、リッカー以上の強敵になるに決まってる。
そう言うと静雄さんは、
『そうか、お前はやっぱ頭いいな』と愛しそうに頭を撫でてきた。



「静雄さんが俺バカなだけですよ」



そう冷たく言い放っても、
静雄さんは俺の頭を撫でる手を止めない。
むしろ『俺、ホント紀田バカだわ』とぎゅっと抱き締めてきた。
これがあの有名な喧嘩人形の姿だと誰が思うだろう。
普段、些細な事でも標識を引き抜く短気な彼が、
俺の前じゃあでろんでろん、
海よりも広い寛大な心を見せてくれる。
だから俺もついついそれに甘えてワガママ言っちゃうし、
胡座をかいてしまう。
付き合いたてなら分かる。
けど、半年経った今でもこの調子だ。
今後この関係は当分続くだろう。
静雄さんは俺の言うことはなんでも聞いてくれるし、
絶対嫌がることはしなかった。
アノ時以外は。




「はッ、はッ、ぅああ」
「ここ、気持ち良いのか?」


跨がられ、上から見下ろされる。
窓から入る月の光を反射し、
静雄さんの両の目が暗闇の中で獣のようにぎらぎらしている。
彼の人差し指は俺のいきり立った自身を、
ゆっくりとなぞるように撫でていく。
興奮し切った俺にはその僅かながらの刺激も凄くキて、
さっきから腰がひくついて仕方ない。
片手で口元を押さえ、
こくこくと何度も頷いた。
すると彼の手が俺の手を口元から外し、
指を絡めてシーツに縫い付けた。
耳元に顔を寄せられる。



「口で言わなきゃわかんねえんだけど」



耳膣に直に届く彼の低く甘い声。
それにすらぞくぞくと快感を覚える。



「ぅぅ、…きもちい、デス」
「まだ指一本でしか弄ってねえのに、
すげえ濡らしやがって…」


『インランなんじゃねえの?』
そう耳元で囁かれ、
思わず目尻に涙が溢れる。
その言葉に傷付いたからじゃない。
もっと違う、快感に近い何かが俺の胸に押し寄せ、
余りの恍惚感に自然と涙腺が緩んだのだ。
静雄さんは下着を下ろし、
自身を取り出す。
俺のより幾分大きいそれを視界に捉え、
次に来るだろう快感に胸が震える。
けれど彼はそれを入れようとはせず、
大きな手で互いのいきり立ったそれをまとめ上げたと思うと、
乱暴に扱き出した。
痛い程の愛撫だったが、
その中で僅かな快感をも拾い上げるバカみたいな俺の体。
喉からはひっきりなしに甘い声が漏れた。
けれど、これじゃない。
前戯の時点で解されていた肛門が、
彼を求めてひくついている。



「や、ヤだぁ…」
「何が、ヤなんだよ。
腰、揺れてんじゃ、ねえかよ」



互いの息は荒く、
言葉が途切れがちになる。
確かにこれも充分気持ち良い。
けれど今欲しいのはこれじゃない。
彼が欲しくて仕方なくて、
頭がいっぱいなのだ。
(本当に俺、淫乱なのかも知れない…)



「し、静雄さんので」
「ぁ?」
「静雄さんので、イきたい。
お願いですから、
早く入れて」



静雄さんの目がかっと見開かれる。
けれど静雄さんの手の動きは止まらず、
寧ろスピードがあがった。
視界がチカチカする。
限界が近い。
もう、ムリ――。
その瞬間手を放され、いきなり体を反転させられる。
そして肛門に充てられたと思うと、
一気に奥まで貫かれた。
急激に与えられた質量と待ち望んでいた快感に、
爪先がぴんと伸び頭が真っ白になった。
どくどくとシーツに出され、
青臭い匂いが鼻に届いた。


「何?
入れただけでもうイッちまったのか?」



頷く力すら残されていない。
放心状態で、ただ肩で息をするのが精一杯だった。
しかしいきなり鋭い程の快感が電流の如く体を駆け巡り、
俺は背中を仰け反らせた。
イッたばかりだというのに、静雄さんが乱暴に動き出した。
それも、俺の弱いところばかり乱暴に突いて。
けれどその快感はイッたばかりの敏感な体には気持ち良いを通り越して酷でしかない。
悲鳴に近い嬌声が漏れ、
頭がぐちゃぐちゃになる。



「ヤベェ、可愛い。
めちゃめちゃ可愛すぎて、
止まんねえ」



静雄さんの熱に浮かされた声が鼓膜を震わす。
可愛くない。かわいくないから。
『もうヤメテ』と言いたいのに喘ぎ声ばかりで言葉にならない。



「きだ、あ、あいしてる。
ゼッテェ離さねぇ、」



彼の汗がぱたぱたと背中に落ちる。
離れたくても、もう離れようが無い。
力無い指でシーツを掴んだ。
二回目の絶頂は、
もうすぐそこまで来ている。







エロらしいエロが書きたくなりました。
静雄には紀田と呼ばせるか正臣と呼ばせるかいつも悩む所です。



101202







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