*「さよならみどりちゃん」パロ





「あぁ、俺ちゃんと彼女いるから。
正臣くんとは付き合えないよ」


そう言われたのは、
初めてのセックスの後だった。
俺はゲイではない。
どっちかってゆーと、
ほぼノンケだ。
今まで男とのセックスどころか、
付き合った事すらない。
女の子に興味はあっても、
男にときめいた事なんて一度もなかった。
けど臨也さんは男の俺でも惹かれる何かがあるし、
誘われた時死ぬ程嬉しかった。
付き合えると思うのが自然な流れだ。
なのに…。





(ありえないだろ)
「何一人でブツブツ言ってんだ。
さっさと料理運べ」


はっと我に返る。
どうやら声に出ちゃってたらしい。
俺はキッチンから出てきた料理を受け取り、
そのままホールへと出た。
俺は週に3、4回、
このカフェダイニングでバイトをしている。
大学に入ってすぐ始めたバイトも、
もうすぐ一年経つ。
ちょっとした雑誌に載るくらい有名らしくて、
平日の夜でも割と混雑する。
最初は目が回るような忙しさに死ぬかと思ったが、
今では手際よく仕事をこなせるようになった。
今日もほぼ満席で、
ずっとお待ちが出る状況が続いている。
料理を運んでデシャップまで戻って来ると、
店長の門田さんに呼び止められた。


「おい紀田。
お前今日10時上がりだったよな?」
「はい。
どーしました?」
「悪いけど、
ラストまで残ってくれねーかな?
今日ホール人足りてねえんだよ」


普段俺は余りラストまで入らない。
朝に弱いのと、
一回生の間は1限からの授業が多くて、
大体10時には上がっていた。


「いいスよ。
明日学校午後からだし」
「悪いな。
まかない美味いもん食わせてやっから」
「わーい!
…て、作るの店長じゃなくてキッチンさんじゃん!」


ふざけ合いつつも手は休めずテキパキと動く。
バイトメンバーは皆仲も良いし、
時給は良いって事はないけど、
まかないはどれも美味しいし、
俺はこのバイトをめちゃくちゃ気に入ってる。



結局店は閉店間際までお待ちが出る程の混雑で、
普段ラスト作業が終わる時間より、
一時間も遅れて終了した。
時間はもう12時を過ぎている。
私服に着替え、
キッチンのカウンターで賄いを食べてると、
門田さんがやって来た。


「お疲れ様です」
「おぉ、お疲れ。
今日は悪かったな」
「いえ、いいスよ。
つかこれからもっとラスト入ります」
「そうしてくれるとスゲー助かるわ。
あぁあとこれ、
ラストまで残ってくれたお礼」


そう言って出してくれたのはプリンだった。


「あれ、うちのメニューにプリンなんてありましたっけ?」
「今度また出そうかと考えてんだよ。
また感想聞かせてくれ」


そう言ってホールへと戻っていった。
うちの店は創作イタリアンっつーか、
見た目にも凝ってる料理が売りなんだけど、
こういうシンプルな料理は珍しかった。
まだご飯の途中だったけど、
一口先に食べてみる。
特別美味しいって訳じゃないけど、
素朴な味が舌に広がり、
苦味のあるカラメルソースとよく合ってる。
好みの味だった。
結局一口だけ先に食べるつもりが、
そのまま全部食べてしまった。
賄いを食べ終わり帰り支度をする。
ホールに出ると、
門田さんがテーブルで書類整理していた。
門田さんの向かいの席に誰か座ってるが、
柱が邪魔でこちらからは姿が見えない。


「お疲れ様でーす」
「おぉお疲れ」
「オツカレス」


門田さんの前に座ってたのは、
キッチンの平和島さんだった。
平和島さんは門田さんの昔からの知り合いらしく、
門田さんの紹介で最近入ってきた。
すっげーイケメンでスタイルもめちゃくちゃいいけど、
いっつも無愛想且つ無駄にある威圧感で、
周りの皆からビビられてる。
俺もあんま喋った事ないし、
うるさいからか何なのか、
気づくと時々キッチンから睨みつけられたりしてるんで、
若干ニガテだ。



「お前もう帰るのか」
「はい、店長はまだ帰らないんすか?」
「俺はまだ仕事残ってんだよ。
ところでプリンどうだった?」
「美味かったっすよ。
うちの店ではあんま無い感じですけど、
出したら売れるんじゃないですかね?」
「そっか」


その時、ゾクッとする程の鋭い視線を感じた。
平和島さんがサングラスの下から睨み付けてるのが分かった。
何なんだこの人!
俺、変な事言った!?
俺は門田さんに助けを求めるように視線をやった。
けど、書類を見ている為全く気づいてない。


「そういや紀田池袋方面だったよな?
静夫、一緒に帰ってやれよ」
「え、いやいいスよ!
そんなわざわざ、
女の子じゃあるまいし」
「遠慮すんな。
こいつも池袋方面だし。
最近ここらも物騒だしな」

いや、決して遠慮してる訳じゃ…。
そう言いたかったけど、
言葉に出来る訳はなかった。
ちらりと平和島さんに目をやる。
サングラスの下の視線とぶつかった。
その目元がほんのり朱色に染まった気がしたけど、
気のせいだろう。








ドタチン出まくりです。
続きます。






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