う  受け流したふりをして、こっそり拾った | ナノ

ж鬼道→円堂


*Web拍手の再録です。
お題は:afaikさまより『夕日影』からお借りしてます。


う  受け流したふりをして、こっそり拾った


「鬼道監督は、どうして円堂監督と友達になったんですか?」


極めて遠慮がない不躾な質問に、サングラスの奥の瞳を軽く丸める。
そして隣に並んでフィールドを見詰める少年を見下ろし、軽く息を吐いた。
雷門中のエースストライカー、剣城京介。
腕を組んでひたりと視線を見据える先には、彼と同じ部活のムードメーカーたちの姿があり、ほんの僅かに口角を持ち上げた。


「突然、どうした?」
「───前から疑問だったんです。鬼道監督は帝国学園出身で、途中から雷門に転校してきたんですよね?当時、帝国の鬼道有人といえば、冷静沈着で機械のように精密な司令塔だと話に聞いたことがあります」
「ほう」


当たらずとも遠からずな話に、少しだけ面映くなる。
過去は過去だが、昔の自分を語られてしまうとほんの少し気恥ずかしい。
しかもそれが周りを見ていなかった、子供の時代であれば尚更。
しかし鬼道の複雑な気持ちに気づいていないのか、ちらりともこちらを見ないで剣城は続けた。


「円堂監督と鬼道監督って、まったくタイプが違うじゃないですか。例えるなら太陽と月・・・でしょうか?円堂監督が降り注ぐ日差しで周囲を照らすなら、鬼道監督はひっそりと静かなイメージがあります」
「まあ、そうだな。俺は逆立ちしても円堂みたいにはなれない」
「・・・鬼道監督がだめとか、そういう話じゃないんです。ただ、完全にタイプが違うから、だからどうやって仲良くなったのか聞きたかったんです」


それは未だ仲間に素直になりきれない、年相応な少年の悩みになるのだろう。
ようやくシードの支配から抜け出して雷門中の一員になった剣城だが、まだ仲間との距離感は微妙なものだ。
それは昔の自分を髣髴とさせるもので、少しだけ懐かしく思う。
しかし剣城の悩みはきっとすぐになんとでもなるものだ。経験者として知っている。
今の雷門中サッカー部は、自分たちが居た頃ととても似ている。
考える前に、ぐいぐいと引きずり込まれ、気がつけば隣にいる。
支えあうのが当たり前で、背中を押して、押されて、常に対等でいる。そんな仲間たちに。
ふっと息を吐きだして、くつりと喉を震わせた。


「───考える必要はない」
「?」
「どうせ考える前に巻き込まれている。そんなものだ」


ささやきに交えて教えると、教え子は初めてこちらを見上げた。
訝しげに柳眉を顰め、納得いかないとばかりに唇をすぼめている。
だが他に説明しようがない。本当に、そうなのだから。
考える前に巻き込まれ、気がつけば中心に据えられる。お前も仲間の一人だと。一緒にいるのが当たり前だと。


「見ないふりをしていたものを、拾ってもらった。きっと、それが理由だ」


さらに追加して教えれば、ますますわからないと少年は複雑な表情をした。
きっとあの日の自分も同じだったのだろうと、ほんの少しだけ愉快に思った。

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