よ  呼びかけるあなたの声が、いつもより子供っぽい | ナノ

ж飛鷹→円堂


*Web拍手の再録です。
お題は:afaikさまより『出掛けよう』からお借りしてます。

よ  呼びかけるあなたの声が、いつもより子供っぽい


「・・・あの」
「ん?」
「つき合わせてすみません、キャプテン」


しゅるしゅると自分から出る空気の音が聞こえるんじゃないかと思えるくらいの勢いで、飛鷹は意気消沈していく。
イナズマジャパンの練習が終わった後の自主トレは、円堂にも負担を掛けているはずだ。
それなのに彼は何一つ嫌な顔をせず、満面の笑みで快諾し、率先してアドバイスもくれた。
仲間に誇れる自分でいるために努力は欠かさないが、経験という名の差がある。
足を引っ張りたくない。もっと上手くなりたい。
始めた頃には予想もしなかった欲求が飛鷹の胸を埋め尽くし、今の自分は、サッカーをしていなかった自分をもう思い出せない。


「気にするな!俺ももっとサッカーをしたかったとこなんだ」


飛鷹が蹴ったボールを受け止めた円堂は、汗だくになりながらも心底楽しそうだった。
他のイナズマジャパンの仲間と同じで、飛鷹も無条件に彼の言葉を信じられる。
けれどキャプテンとしてのプレッシャーも含めて疲れもあるだろう彼に頼りきりなのは心苦しく、つい視線が俯いた。


「でも、キャプテンも忙しいのに」
「ははっ、本当に気にしなくていいのに。俺は全力で楽しんでるんだから、飛鷹も今を楽しんでくれよ。折角二人でサッカーが出来るんだぞ?こんな機会、自主トレでもないかぎり中々ないんだし、俺は嬉しいんだ」


俯けていた視線を持ち上げると、ふうわりと、幸せそうに微笑む円堂の姿。
ぐっと心臓をつかまれたような気がして、飛鷹は息を詰まらせた。
一拍おいて激しく音を立てる鼓動に連動し、頬に熱が集まってくる。

ずるい人だ。
彼は太陽みたいな魅力的な笑顔と、誰をも惹き付ける嘘のない言葉で色んな人をとりこにし、それなのに何も知らずに笑っている。
そこまで考えて、酷いのは自分かと自嘲した。
何も知らない、年齢よりも幼い無邪気な人相手に邪な感情を抱いている。
すまないと思いつつ、同時に二人きりの時間だって、彼が思う以上に喜んでいた。
サッカーが好きだ。自分が変わる切欠をくれた。
でもそれと同じくらい───いいや、それ以上に円堂が好きだ。
男が男に恋をする、なんて考えもしないだろう人に、絶望的な恋をした。


「飛鷹、俺、すっげー楽しい。お前とのサッカー最高だ!」


あっけらかんと嬉しそうに目を細めた円堂の言葉が本音であるのが今は救いだった。
キャプテンとしてではなく、いつの間にかただの円堂守として目の前に立っていた人に、『俺もです』と囁き返すだけで胸がいっぱいになって、何故か涙が零れそうになった。

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