片思いで5のお題3 | ナノ

ж豪炎寺→円堂←鬼道


*Web拍手の再録です。

お題はお題配布処−ギルビィ−様より『片思いで5のお題』からお借りしてます。
3.届かないかもしれないものに手を伸ばす方法


例えば、対象者に対してとんでもなく距離が遠い人間と。
逆に、対象者に対してとんでもなく距離が近すぎる人間と。
どちらの恋の成就が困難なのだろうか。

目の前でもう一人の親友と語り合う円堂を見詰め、ふと沸いた疑問に小首を傾げる。
鬼道が円堂に対して特別な感情を抱いているのは、なんとなく気付いていた。
恋愛話をするのはお互いに柄じゃないので言葉に出して問うたことはないけれど、確信すら抱いている。

サッカー部のミーティングをしている時、ふと横顔を覗き込んだ際の優しく甘ったるい雰囲気。
瞳こそ見えなくても、無自覚に緩んで綻んだ唇が、円堂の傍でどれだけリラックスしているか教えてくれる。
例えば同じ親友の自分の前でも、きっとあのふとした瞬間の笑みは向けられないだろう。
特別大事にしている妹の前でもそうだ。
妹と円堂は違う。
妹は守るべき相手で、円堂は共に戦うべき相手。同じ扱いをするのは無理な話だ。

鬼道と豪炎寺は極めて似た条件を揃えている。
二人とも言葉足らずな部分があり、同年代の相手から遠巻きにされるか、それとも憧れを前面に押し出される場合が多い。
間を取って馬鹿をやる仲間の存在はとても有り難く、中でも『円堂守』は別格だった。

彼の傍は酷く居心地がいい。
兄として常に正しくあろうとする姿も、エースとして、もしくは天才司令塔として恥じないプレイをしようとするためのプレッシャーも、学校で求められる品行方正な優等生の仮面も、彼の前では全部必要とされてなかった。

飾らない自分。
それがどんなものかわからなかったが、円堂に言わせれば『飾っている』二人が想像できないらしい。
思わず鬼道と顔を見合わせて、思い切り噴出してしまったのも、いい思い出だ。

彼と自分はよく似ている。
だからこそ、互いがどれだけ目の前の人物を欲しているかも、理解していた。
そして───似ていないようでいてとても似ている親友以外にも、彼の存在を欲している人間が溢れんばかりにいるのも。


「なぁ、鬼道。近すぎる距離と遠すぎる距離はどちらが不利だ?」
「いきなりどうしたんだ?豪炎寺」


きょとんとした顔でこちらを見詰める円堂とは違い、質問の意図を理解した鬼道は、じっとこちらを見詰めて、ふむ、と顎に手を置いた。


「それは難しい問題だな。俺には皆目見当がつかん」
「そうか」
「鬼道でも見当が付かない問題があるのか?」


今度の期末に出たら困るな、なんて暢気に笑いながら頭を掻いている彼は、本当に鈍感だ。
だがこの鈍感さも含めて円堂の魅力なのだから、諦めるしかないだろう。
眉尻を下げて苦笑すると、極めて似た表情を浮かべていた彼は、腕を組んで結論を下した。


「だが諦めないことが前提であるのは間違いない」
「・・・そうだな」


溜息混じりに笑ったら、視線の先にいる円堂は不思議に小首を傾げる。
距離が近くても遠くてもどちらが不利か判断できないなら、届かないかもしれないと知りつつも、必死に腕を伸ばすしかないのだろう。
そして自分たちはそうし続けてしまうだろうと、瞼を閉じれば浮かぶ未来に、面白そうだと喉を震わせた。

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