すきすきすき | ナノ

жヒロ→円


*Web拍手の再録です。



すやすやと眠る幼い寝顔に、ヒロトはふんわりと微笑んだ。
普段はほとんど表情筋が動かないとか、ポーカーフェイスが上手いと言われるけれど、彼に関しては当てはまらない。
練習に疲れたのか、イナズマジャパンの宿舎から程近い浜辺の木に吊るされたタイヤの下で寝息を立てる円堂は、ずっと見ていても厭きがこない。
否、来るはずがなかった。

円堂守は基山ヒロトの心に革命を起こした人物だ。
いつだって人を惹きつけて止まないカリスマ性で仲間の中心に立ち、強くてしなやかで優しくて格好いい。
時折見せる脆さや不安げな表情は、胸を締め付けて守りたいと心から希う。
彼が居るだけで幸せで、話せなくても、見詰めるだけでも、胸の噴水から溢れんばかりの喜びが沸いてきた。


すきすきすき


声に出さずに囁いてみる。
一度寝たら中々起きないところも可愛い彼は、ヒロトが手を伸ばして髪を撫でてもぴくりともしない。
それだけストイックに過酷な練習を繰り返していても、それを前面に出すのでもなく、威張らないし驕らない。


すき、すきすき


聞こえないと、届かないと知ってるからこそ何度もぱくぱくと口を動かす。
この想いはきっと陽の目を見ることなく伸びてく。
それでも一生抱き続ける、ヒロトにとって一番大切で特別なものだった。

彼が自分を選んでくれる未来を夢想したことがある。
それはとても幸せなものだったけど、誰かに後ろ指を指されるかもしれない関係になる気はなかった。
彼は、円堂守は日向に咲く花だ。
天に向かって真っ直ぐ伸びる、向日葵のように一直線で一途で曲がらない花。

栗色の髪に手を入れて、起こさないように最新の注意を払いながらそっと指先で弄ぶ。
柔らかい感触は病みつきになりそうで、止めれなくなる前に手を離した。


「───好きだよ」


我慢できなくなって、ぽつりと呟く。
細波にすら攫われそうな細い声はやっぱり彼には届かなくて、それでもいいと目を細めた。

きっと今の自分は世界で一番幸せな人間だ。
珍しい二人きりの時間を満喫しつつ、ヒロトは心の底から幸せに染まった笑顔を浮かべた。


すきすきすき

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