もっともっとと望む心 | ナノ

ж一円


*Web拍手の再録です。



真正面から見詰める眼差しは、きりきりと引き絞られた矢のように鋭い。
仲間でいる間は絶対に見られない表情に、自然と唇が綻んだ。

これが最後の戦いかもしれない。
心の中にある焦りが、毎日の必死の練習に繋がって、親友はそんな自分を心配しつつも何も言えずに黙認していた。
幼馴染に吐露した弱音は、今はもうどこか遠くに消えている。
今はただ、心が望むままに自由で最高なサッカーを楽しんでいた。


(───君が相手だからだ)


ボールをドリブルして、鬼道を鮮やかに躱す。
立ち塞がった元仲間達。
慣れ親しんだ彼らの動きなんて、瞼を閉じていても察せれる。
勿論以前より遥かに洗練されているし、強くなっている。
けどそれは一之瀬も同じで、絶対に負けるもんか、とより強く心が感じた。


(負けたくない、絶対に)


栗色の瞳を煌かせて笑う彼は、いつかと同じようにゴール前に腰だめに構えている。
彼に背中を預けて戦った日々は、瞼を閉じれば今でも鮮やかに思い出せた。
辛いことや悲しいこと、苦しいことも一杯あった。
今だってこれが最後になるかもしれないと思うと凄く不安で仕方ない。
けど、だからこそ手加減なんて考えられない。
目の前に最高のライバルがいて、背中を預けた仲間がいて、勝ちたいと望む選手としての本能が疼く。


「───勝負だ、円堂」


小さな呟きは誰かに聞かせるためのものじゃない。
それなのに風に溶けて消えた筈の声に反応するように、ゴール前の円堂の口角が持ち上がるのが見えた。




この一瞬が、永遠になれば

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