チルコさま | ナノ

それは、月光が綺麗な夜の事だった。
「ねぇ、真宵ちゃん。」
ぼくは広いベッドの上で一人、ぽつり呟いた。

「さよならしようか。」





真宵ちゃんと最後に会ってから、もう随分長い年月が過ぎた。
ぼくが事故に遭った時にトノサマンのDVDを大量に送ってきてくれて以来、連絡も無い。
綾里家の新しい家元になって仕事の方も忙しいのだろうが、流石にこれだけ連絡が無いと、もうぼくの事なんか忘れているんじゃないだろうかと不安になる。

彼女は今どうしているのだろう。
連絡してみようかと思ったが、彼女が忙しいかもしれないという事を考えると、電話さえも出来なかった。
それくらい臆病になっていたのだ。

そうして僕は決めた。
こんな風に辛い思いをするくらいなら、いっそのこと別れてしまった方がマシかもしれない。
それならば。

繰り返されるダイヤル音。
ぼくは寝室のベッドの上に座って、真宵ちゃんに電話をかけていた。
「――もしもし。」
暫くして受話器越しに聞こえてきたのは、懐かしい、聞き慣れた声。
「もしもし、真宵ちゃん?」
「な、なるほどくん!?」
彼女は驚いていた。そりゃそうだろう、今まで連絡が無かったのだから。






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