「こら、そればっかり食べるな。スコーンか何か焼いてやるから」
「やだよ、そんなもん食ったらすぐ腹いっぱいになるだろ」
スプーンを咥えたまま南沢が口を尖らせた。その左手にはジャムの瓶。中身はもう半分なくなっていて、それも全て南沢が食べたあとだった。
「そんなに甘いもの食べてると病気になるぞ」
「食わない方が病気になる」
三国がいくら言っても南沢はこの調子で、ひたすらジャムだけを口に運んでいた。見ているこちらが甘さにえずいてしまいそうだ。
ジャムは、三国がたまたまスーパーに行ったとき、特売で安く売られていたからと作ってみたいちごのジャム。
初めて作った割に上手くいったので、甘いものに目がない南沢を家に呼んであげてみたのだが、ここまで気に入ってもらえるとは思わなかった。
だが、ジャムを作っているときにもあまりの砂糖の量に自分でも驚いたのに、それを一気に食べてしまうのはやはり身体に悪い気がする。
いくら言っても聞かないので、三国はスプーンの手を止めない南沢からジャムを奪った。
「あっ、てめ」
「今日はもうおしまいだ。残りは明日」
そう言うと南沢が頬を膨らませる。つまらなそうにスプーンを咥えて三国を睨んだ。
「もっと食えるのに」
「我慢しろ。そんなにすぐに腐るわけじゃないから」
瓶のふたをしめて、南沢が持って帰れるように小さな袋に入れてやった。
「口の中甘いだろ、紅茶おかわりいるか?」
台所に置いたポッドを手に持ち三国は聞いた。が、南沢ががたりと席を立ったのでトイレだろうかと首をかしげた。
「いらない。それよりもっと飲みたいものあんだけど」
「今あんまり他に飲み物はないが……」
「それじゃない」
くいくいと南沢が三国の袖を引く。何だろうと三国も南沢のほうを向くと、首の裏を掴まれて身体を折らされた。南沢がキスをしたがるときによくやる行動だ。三国と南沢の身長差では三国が前かがみにならなければできないのだから仕方がない。
南沢のしたいことを理解して三国も南沢に唇を寄せた。んむ、と柔らかい唇が触れ合う瞬間は何度しても照れてしまう。
だがそれは三国だけのようで、南沢は三国の唇を食み舌を伸ばしてきた。それに慣れないながらも応えて舌を絡ませると唾液だけでもじゅうぶんに甘ったるかった。
「っふ、ん……」
すぐそばにある南沢の鼻が細く鳴る。ほんのり香るいちごと唾液の甘さ、そしてそれよりも甘い南沢の吐息に、ここが台所であるということも忘れて興奮した。
南沢が深く口付けてくるのに合わせて三国も南沢を貪る。やがて満足した南沢が、は、と唇を離し顎を手で拭った。
「南沢、飲みたいものって……」
「ああ、違う違う」
南沢が三国の首から手を離し床にしゃがんだ。嫌な予感がして三国は身体を強張らせた。
「こっちな」
「ッ南沢!」
膝をついて、目の前にきた三国の下腹にうっとりと手をやってくる。三国が南沢の肩を掴んで離そうとすると、ズボン越しに三国自身を掴む南沢の手に力が込められてひっと声を上げた。
握りつぶされる。
想像しただけで顔が青ざめた。
「大人しくしてりゃ潰さねえから、な、飲ませて」
そう言いながらも南沢はすでに三国のズボンのファスナーをおろしていて、下着の合間から萎えた三国自身を取り出していた。
本当に潰しかねない南沢を考えると下手に抵抗もできない。三国は背を台所のシンクに預け、せめて早く終われと祈った。
「んむっ……」
南沢が三国のものを口にふくむ。唇に少し力を入れて、そうしてまた舌で包むように性器を擦る。手でもそれを撫で、また扱くように動かし始めた。
南沢のフェラは、はっきり言ってすごい。もっとも他と比べたことなどないから実際のところどうなのかは分からないが、これで下手だと言う奴は誰もいないだろうと思う。
三国は南沢の頭に手を置き、耐えるように息を吐いた。だが南沢はそんな三国を上目遣いで一瞥しますます口淫を激しくさせた。
「っく、南沢っ……」
「イきたくなったらイけよ」
舌で三国の先端を突いて南沢は挑戦的に笑った。その表情にも三国は煽られて、南沢の頭に触れた指に無意識に力が篭った。
ちゅ、と口づけ手で扱く。部屋の明るい照明で、三国自身は南沢の唾液と先走りにぬらぬらと光っていた。
「もう無理だ、出すぞ……」
「ん」
三国がそう言うと南沢はべっと舌を出して待ち構えた。その赤い舌めがけて射精する。びゅ、びゅと数回にわたって吐き出されたものを南沢はこともなげに飲み干して、また手と唇で搾り取るように性器を吸った。
全てを嚥下し満足したのか、南沢が唇をぺろりと舐め立ち上がる。
「はあ、不味かった。ごちそうさん」
「……悪趣味……」
「いいだろ、甘いもん我慢したんだから」
三国の胸元で楽しそうにすりすりと額を擦りつける南沢に、三国は勝てなかった。
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2012.02.25
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